電気自動車(EV)充電インフラ事業者の一つ、自動車系ベンチャーのTerra Motorsが「東京都内1000カ所に急速充電器を無償設置・運営する」という驚きのバラまきプランをぶち上げた。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、充電インフラ市場のシェアを一気に取りにいこうとする戦略の裏にある、同社の徳重徹会長が心酔する“教本”の存在を明かすほか、徳重氏の意気込みを発言からひもとく。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
総事業費150億円以上を
大盤振る舞いしてシェア確保
電気自動車(EV)充電インフラ事業者で、インドでの電動バイク・三輪車で名を上げたベンチャー、Terra Motors(テラモーターズ)が9月26日、驚きのEV充電インフラ設置計画を発表した。
その中身とは、東京都内1000カ所に急速充電器を無償で設置し、さらにランニングコストも負担するというものだ。しかも出力は「超」急速の150kWが中心。行政・商業施設、コンビニ駐車場などへの設置の目標達成期間は1年半ほどを想定している。なおEVユーザーの充電料金課金の詳細は今後明らかになる。
同社によると、急速充電器には製品と工事費で1500万~2500万円、メンテナンス費で年数十万円、さらに多額の電気代がかかる。EV周りは資金調達環境が良く、また国などからのEV充電補助金を見込めるとはいえ、単純計算で総事業費150億円以上を投じる大勝負に出たというわけだ。
創業者の徳重徹会長は7月、ダイヤモンド編集部の取材に対し、「このビジネスはPayPay(決済)戦争以上。来年に勝負がつきますよ」と話していた(詳細は『EV充電インフラ市場に電動バイクでインド席巻の日系企業が逆上陸!「PayPay決済戦争以上」発言の真意』)。この発言を具現化し、まずは首都・東京から一気に急速充電のシェア獲得を狙う。
同社は2022年にEV充電インフラ設置市場に参入した後発であり、これまでも普通充電器で同様の戦略を取って急激な追い上げをしてきた。そして、桁違いにコストがかかる急速充電器でも本気度を見せつけてきたのだ。早速、家電量販店大手のコジマが導入を決定した。
“劇場型”ともいえるEV充電インフラ戦略を展開するTerra Motors。実はダイヤモンド編集部の取材に、徳重会長は“教本”というべき書物の存在を明かしていた。