エネルギー動乱Photo:123RF

G20や国連などの国際会議の舞台で、温室効果ガス排出削減対策に関する合意形成が迷走している。11月にUAE(アラブ首長国連邦)で開催されるCOP28(第28回気候変動枠組条約締約国会議)でもタフな議論の展開が予想される。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、近年の迷走ぶりを振り返るとともに、COP28の結末を予想します。(KPMGコンサルティング プリンシパル 巽 直樹)

インド開催のG20でも
「G7の片思い」が露呈

 G20(先進国に新興国を加えた主要20カ国)や国連などの国際会議の舞台で、温室効果ガス(GHG)排出削減対策に関する合意形成が迷走している。

 5月20日にG7広島サミット(先進7カ国首脳会議)で発出された首脳コミュニケ(共同声明)には、「排出削減対策が講じられていない化石燃料のフェーズアウトを加速させるという我々のコミットメントを強調し、他国に対して我々と共に同様の行動を取ることを呼びかける」という文章が記載された。

 しかし、G7からのこうしたメッセージが新興国や開発途上国に十分には届いてはいないようだ。大方の予想通り、その後の7月にインド各地で開催されたG20では、今回もまたG7の片思いが露呈する形となった。

 まず7月22日にインドのゴアでG20エネルギー移行大臣会合が、続く28日には同国のチェンナイでG20環境・気候持続可能性大臣会合が開催された。いずれも、昨年インドネシアのバリ島で開催された同様のG20関係閣僚会議において共同声明採択には至らなかったことと同様に、今回もまた化石燃料利用の低減ないしは撤廃に関しての合意を得られずに終了した。

 今年11月にUAE(アラブ首長国連邦)のドバイで開催されるCOP28(第28回気候変動枠組条約締約国会議)でもタフな議論の展開が予想される。これらは既に、前回の寄稿(7月18日配信『脱炭素へ「補助金世界大戦」勃発!官民150兆円投資の日本に勝ち目はあるか?』)で指摘した通りだ。

 先進国の間では排出削減対策に向けた補助金競争に明け暮れる一方で、その他の資源国、さらなる経済成長を追求する新興国や、増大するエネルギー需要を抱える開発途上国などにおいては、排出削減について多様な考え方を持っている。

 総じて排出削減自体に反対する国は少ないが、エネルギーミックスについては国情が反映されるべきだとし、化石燃料利用についてのフェーズアウトはおろか、至近でのフェーズダウンも想定されてはいない。