「なんでもやる会社」を掲げるDMM.comが5月にEV充電インフラ事業に新規参入し、業界がざわついた。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、競合他社から不気味な存在として見られているDMM.comにスポットを当てる。社内でいくつもの新規事業の実績があり、この事業の要でもある女性事業部長が8月下旬に取材に応じ、「意思決定は参入発表のわずか2カ月前だった」と明かした。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
EV充電インフラ開始3カ月で
「2500基受注」とアピール
電子書籍、動画配信、オンライン英会話、FX(外国為替証拠金取引)、地方創生など、60以上の事業を展開するDMM.com。
同社は5月、EV充電インフラ事業に参入すると発表した。同社EV事業部の植木奈生子事業部長によれば、参入の意思決定をしたのは、そのわずか2カ月前だった。
EV充電インフラ事業にこれまでに参入したプレーヤーは、e-Mobility Power(東京電力ホールディングス子会社で中部電力やトヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、三菱自動車など出資)、新電力大手としての顔を持つENEOS、電力系ベンチャーENECHANGEなど、電力や自動車がバックグラウンドにある企業がほとんどだった。
DMM.comは確かに自然エネルギー事業(DMMエナジー)を展開しているものの、電力業界での存在感は薄い。そのため多くのEV充電インフラ競合他社からは“異業種”からのEV充電インフラ参入と認識されている。
「各社とも先行投資段階で赤字垂れ流しのEV充電インフラ事業なのに、テレビコマーシャルまで打つほどの勢いで参入してきた勝算はどこにあるのか」。EV充電インフラ事業の複数の競合他社がDMM.comの実力値や意図を測りかねて、不気味がっている。
そのDMM.comは開始3カ月で早くも2500基を受注したとアピールする。次ページから、自動車、インフラ、電力などの経験が全くないにもかかわらずEV充電インフラ事業を率いる植木事業部長との一問一答をお届けする。