「生産性の高い会議」と「低い会議」の違いはどこで生まれるのか? 「デジタルマーケティング」の分野で圧倒的支持を受けるマーケティングコンサルタントの戸村恵太氏に、マーケター、コンサルの視点で「生産性の高い会議」をつくるポイントについて聞いてみた。

時間が長いだけの「生産性の低い会議」に共通する特徴Photo: Adobe Stock

会議の質を左右する「プロセスの言語化」

戸村恵太(とむら・よしたか)
株式会社デジタルインテリジェンス代表取締役社長。マーケティングコンサルタント。大手メディアバイイングでのアカウント営業、メディア事業会社の新サービス開発、データビジネス事業会社設立などに携わり、2014年よりデジタルインテリジェンスに参画。2020年より同社CEO。自動車、化粧品、通信会社、電子機器メーカーを中心に、シニアコンサルタントとして多くの企業から「マス×デジタルマーケティング」の分野で圧倒的支持を受けている。

 打ち合わせや会議で論点がゴチャゴチャしてしまい、結局どうすればいいかわからない……。そんなケースはよくあると思います。

 その大きな原因として、ファシリテーターがプロセスを言語化し、共有できていないことが挙げられるでしょう。

 たとえば、「とある商品の売上が悪い」というケースで考えてみましょう。このとき、よくあるのは、次のような会話です。

「テレビ広告を打ち、F1層への認知を高めるべきだと思います」
「いやいや、店頭の売上が落ち込んでいるのだから、パッケージデザインを変えるべきでは」

 このように、「具体的な手法」にばかり話が及んでしまうことはないでしょうか。これこそ、「プロセスの言語化」がなされていないからなのです。

抽象度の高い「議論のMAP」で、本質のついた話し合いができる

 プロセスの言語化とは、簡単にいえば「議論のMAP」をつくるようなイメージです。

① 現状を理解する
② 理想の状態を考える
③ 現状と理想のギャップを抽出し、「なぜ」を解釈する
④ 課題化する
⑤ 具体的な対応策を考える

 課題解決を考える場合、主にこの5つのポイントが考えられます。このプロセスを共有していると、「今どの地点の話をしているのか」を参加者が理解でき、本質的な議論ができます。また、場合によっては「これだと難しいから、②の理想の状態についてもう一度考えてみよう」というように、後戻りして考えることもできるのです。

「課題以前の話し合い」が、良い着地点につながる

 そもそも、①~③のプロセスを省いてしまうことが、長時間かかる割には結論が出ない「生産性の低い会議」が生まれる理由かもしれません。

 先ほどのケースでいえば、「売上が悪い」ことを課題として捉え、④から話し合いが始まっていることが問題です。①~③のプロセスを経ていないために課題の深度が浅く、参加者がそれぞれの論点で課題を捉えてしまっているわけです。

 先ほどのケースであれば次のようなプロセスを経て課題を深堀りすることが求められるでしょう。

① 【現状】中流ブランドに見られている
② 【理想】高級ブランドとして認知されたい
③ 【ギャップが生まれている原因】新興ブランドだから、商品が置かれているストアやシチュエーション、価格帯の設定、パッケージ

 このように、「現状」と「理想」について話し合い、そのうえでその「ギャップを生まれている原因」をいくつか挙げる。その中で「できること」「できないこと」を仕分けし、もっとも優先度の高い最終課題を抽出すれば、どんな対応策がよいか、より建設的な議論ができるわけです。

 もちろん、課題が深く共有されている場合は、①~③を改めて言語化する必要はないかもしれません。でも、もしうまくいかない場合は、ぜひこのプロセスを思い返してみてください。