日本で今後長期的に継続する人口減少は、預金のみならず貸出マーケットの縮小を通じて地銀の経営体力をそぐとみられる。当社では、2030年における都道府県ごとの貸出マーケットの予測を行い、生産年齢人口が1~2割減少すると見込まれる東北地方などの地域では、貸出残高が1割前後減少すると推計した。人口が増加する地域と減少する地域では、おのずと地域金融機関が目指すべき方向性は変わる。特に、人口減少が顕著な地域における小規模な金融機関については、自前のシステムを諦めて他行のシステムの活用に迫られることもあろう。
人口減で直撃を受ける貸出マーケット
日本の人口は、ピーク時には1億2,800万人を超えていたが、2008年以降減少に転じ、50年代には1億人を割り込むことが見込まれている。生産年齢人口は、1995年のピーク時には約8,700万人であったが、2022年時点では約7,500万人と、約14%の減少となっている。22年1月時点の推計では、26年ぶりに東京都の人口が前年よりも減少し、記録が残る1975年以降で初めて首都圏全体の人口も減少した。2023年1月時点の推計では、沖縄も調査以降初めて減少に転じ、全都道府県で人口が減少した。
人口の減少により、金融機関の主な収益源である貸出マーケットの減少が想定される。22年時点の道府県別の貸出マーケットと生産年齢人口の関係性を見てみると、図表1のとおり高い相関を示している。日本全体の貸出額が、生産年齢人口に応じて、各道府県におおむね分配されていることが分かる。