真面目な管理職ほど、不機嫌になりがち?

「何をわかりきったことを言ってるのか……」

 そう思う人もいるかと思いますが、これが実は難しい。

 なぜなら、現場のマネージャー(中間管理職)には強度のストレスがかかるからです。チームの「目標」「成果」に責任をもたされ、常に、上層部からのプレッシャーを受けていますし、さまざまな個性や能力をもつメンバーと意思疎通を図りながら、仕事を進めていくのも骨が折れるものです。

 しかも、近年はプレイング・マネージャーが多いですから、自分の「個人成績」を達成するためにも汗をかかなければならないうえに、メンバーが引き起こす突発的なトラブルへの対応にも走り回らなければならない……。

 そんななか、常に「機嫌よく」いるのは、決して簡単なことではありません。それどころか、マネージャーとしての責務を一生懸命に果たそうと努めるがゆえに、自分でも気がつかないうちに、ピリピリした「不機嫌」な雰囲気を醸し出してしまっているものです。「真面目なマネージャーほど、不機嫌になりがち」と言っても、あながち間違いではないと思うのです。

「自分を知る」ことがマネジメントの第一歩

 では、どうすれば「機嫌よく」いられるのか?

 ここでは、3つのコツをお伝えしたいと思います。

 まず第1に、「自分を知る」ことです。「いま、自分は機嫌がいいか? 悪いか?」を常にモニタリングするのです。起床時、出勤時、業務中、会議中など、時折、自分のメンタル状況を客観的にチェック。「不機嫌」なときや、「不機嫌になりそう」なときには、一呼吸置いて、気分を変えることを習慣づけるといいでしょう。

 また、「鏡で自分の顔をチェックする」のも有効です。不機嫌は顔に表れます。あるとき、トイレで手を洗ってふと鏡に映った自分の顔を見て、「こんな不機嫌な顔でいたら、誰も話しかけてこないな」と反省したこともあります。それ以後、会議の合間や、トイレに入ったときなどに、鏡で自分の顔をチェックするようにしていました。

 特に、ストレスフルな状況に陥ったときは注意が必要。強度のストレスがかかると、人間は簡単に視野狭窄に陥ってしまいます。「目の前の問題」に意識を集中するあまり、「不機嫌」になっている自分に気づけなくなるのです。

 このようなときこそ、「いま、自分は焦ってるな」「いま、自分は怒ってるな」などと、自分のメンタル状況を客観視することが不可欠。それさえできれば、ネガティブな感情にのみ込まれて、失態を演じるような事態は避けることができるでしょう。そして、一呼吸置いて、冷静に対処すべく心を整えることができるのです。

「部下」をマネジメントする前に、
自分の「機嫌」をマネジメントする

 また、「自分の習性」を知っておくことも大事です。

 あるベンチャー企業の経営者の話をご紹介しましょう。

 彼は、自己分析の結果、自分が「不機嫌」なときに、「経営判断のミス」や「部下とのコミュニケーション・ミス」を犯していることを認識したそうです。

 そこで、「どういうときに、自分は不機嫌になるのか?」を把握するために、日々の自分の「行動」と「メンタル状況」をエクセル上で数か月間にわたって記録。その記録をつぶさに検証することで、いくつもの「発見」があったといいます。

 例えば、睡眠時間が6時間を切ると「不機嫌」になる傾向があることや、ストレスフルな状況に陥ったときに、憂さを晴らすためにお酒を飲んだ翌日に「不機嫌」になることなどが、手に取るようにわかったそうです。

 そして、どんなに忙しいときでも、絶対に6時間以上の睡眠時間は確保するようにしたり、ストレスが溜まったときには、お酒を飲むのではなく、運動をして身体を疲れさせて、ぐっすり寝るようにするなど、少しずつ生活習慣を変えていきました。

 その結果、以前と比べて「不機嫌」になることが少なくなり、部下との関係性も改善され、会社経営にも安定感が備わってきたとおっしゃいます。このように、「自分の習性」を客観的に把握することで、「自分のメンタル」を適切に管理することも非常に重要なことだと思います。「部下や組織をマネジメントしようとする前に、まず、自分の”機嫌”をマネジメントできなければダメだと痛感しましたよ」という彼の言葉に、私も深く共感をしています。