ちなみに、昨年に刷新される前のエンジン製造工場で使用していた工作機械は50年前から同じものであったというが、現在では長年使用していたロータリーエンジン用の加工機・部品生産ラインも一新されている。
もし、混流生産という生産技術が確立する前のどこかのタイミング、たとえば2015年の東京モーターショーで発表された『Mazda RX-VISION』がそのまま発売が決まり、これまでと異なるディメンジョンのロータリーエンジンを搭載することとなっていたら、エンジン製造加工ラインと工作機械は13Bを作ることが出来ない機械に改良、入れ替えになっていたかもしれないのだ。
それはすなわち、RX-7・RX-8の13B型の補修用部品としてのロータリーエンジンが作れなくなり、ひいてはエンジン修理が出来なくなるといった事態に陥るということだ。このマツダの新たな生産技術の確立したタイミングと、これからのマツダにとって必要な発電用エンジン8Cを新規で作ることになったタイミングが合致したからこそ、新しい製造加工工場でディメンジョンの異なる13Bを同一の工作機械で作れるようになった。つまり、過去のロータリーエンジンの命をつなげ、いまなお世界に数多く存在するRX-7・RX-8オーナーたちのこれからのロータリーライフも潰えることなく未来につなぐことができた、といっても過言ではない。
しかも、最新で高精度な加工ができるマシニングセンターやバランシングマシンを導入したことで、13B用補修部品もこれまでより製作精度がぐんと上がるメリットもあるというおまけつきだ。なお、RX-7・FD3S型用13B-REWやRX-8用13B-MSPの新品ベアエンジン(商品名はショートエンジン)は現在も生産を続けており、ディーラーなどで購入が可能だ。