他のデータを見ると、情報セキュリティーインシデント(情報セキュリティー上の脅威となる出来事)件数やウェブサイト改ざん件数はほぼ横ばいだ。一方、データを人質に身代金を要求するランサムウエア被害やフィッシング件数は大きく伸びている。つまり、サイバー犯罪は愉快犯的ないたずらからビジネスへ変貌したといえる。
この傾向は日本だけではない。昨年の全世界におけるフィッシングサイトの総数は、前年比67%増の約474万件だ。不自然な日本語で海外の不審なメールを見分けられたのは過去の話で、生成AIの活用により判別は難しくなるだろう。さらに、このような犯罪は組織的な分業体制が敷かれ、グローバルなビジネスと化している。
警察庁によれば、振り込め詐欺など特殊詐欺の認知件数は年間1万7570件、そのうち高齢者(65歳以上)の被害が約87%だ。電話による犯罪さえこの状況であるならば、高齢者にとってインターネットは危険地帯そのものだ。
現代ではデジタルを基盤とした社会が形成されており、サイバー攻撃は社会に壊滅的な打撃を与える。特にわが国では、人口の約3割を高齢者が占めるため、全国民が安心してデジタルの恩恵を受けられる環境の整備が求められている。官民が一体となって、国際連携を視野に入れた実効性のある犯罪撲滅に取り組むことが必要だ。
(行政システム顧問 蓼科情報主任研究員 榎並利博)