自民党内で急浮上する「減税論」、注目すべきは補正予算案の中身自民党内で減税論が急浮上している。中でも、税収増を直接的に国民、企業に還元することもあり得るとした自民党幹事長の茂木敏充の発言は大きな波紋を呼んだ Photo:JIJI

 9月の内閣改造・自民党役員人事を経て取り沙汰された衆議院の「晩秋解散」説は急速に消えつつある。確かに首相の岸田文雄は人事後の解散断行に向け、環境整備をしたことは間違いない。5本柱の経済対策の取りまとめを発表し、懸案だった世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の宗教法人としての解散命令請求など、国民世論を意識した方針を次々と打ち出した。

 しかし、頼みの内閣支持率は「底を打ったかもしれないが、上昇に転じる気配はない」(自民党幹部)。むしろ政権に負荷がかかる問題が次々と押し寄せる。中でも物価高の家計への直撃は深刻度を増すばかりだ。厚生労働省が10月6日に発表した8月の毎月勤労統計調査によると、物価変動を加味した実質賃金は、前年同月比2.5%減で17カ月連続のマイナスとなった。

 どの世論調査を見ても政府が取り組むべき課題を問えば、物価高対策が断トツの1位。岸田も連合の定期大会に出席して賃上げでの“共闘”を呼び掛けた。それだけではない。岸田はいち早く国民の負担軽減に言及している。

「税制や社会保障負担の軽減など、あらゆる手法を動員する」(9月25日、記者団に)

 この岸田発言が減税論議を呼び込んだ。自民党幹事長、茂木敏充の発言は大きな波紋を呼んだ。

「税収増をダイレクトに減税措置などによって国民、企業に還元することもあり得る」(10月3日)