私がつくったコンテンツも、パロディされることはよくありました。そのたびに一部のユーザーや知り合いから「あれはあなたのつくった○○のパクりですよね。いいんですか?」と連絡をもらいます。パクられるというのは、それだけ「世の中に受け入れられている」ということですし、「よくできたフォーマット」だということになります。ですからは私はパクってもらうたびにとても誇らしい気持ちになります。

 そもそも私がつくったものも、「私の完全なオリジナルか」と言われれば違うでしょう。人は生まれてから様々な影響を受けて育ちます。子供のころに読んだ絵本や観たアニメ、思春期にハマった音楽や小説、今やっているゲームや毎日のように使っているYouTubeやTikTokなど、触れてきたすべての物事によって人格が形成されていきます。

 話題のAIは、たくさんの情報から、深層学習アルゴリズムによってパターンや規則性を見つけ出して生成しますが、実は、人のアイデンティティもAIのように生成されたものです。無意識的に吸収したものも含めて、様々な情報が脳や意識の中で混ぜ合わされて出てくるものが、その人のアイデンティティだからです。

書影『スキル』『スキル』(クロスメディア・パブリッシング)
高瀬敦也 著

 少なくともほとんどの情報はインプットされた段階では「いつどのようにアウトプットするか」なんて決まっていません。そう考えるとすべての創作物に「パクりなのかオリジナルなのか」といった境界線は存在しないと考えることが自然です。

 すべての物事においてパクるということは自然なことです。ビジネスにおいて新しいことを始めたり、既存のものに新しいエッセンスを加えなければいけないときは、楽しんでパクりましょう。

 そのときに必要なのはリスペクトやオマージュ、敬意の気持ちです。その気持ちが、参考にする対象の本質的な部分を探求する力になります。「それが、なぜ誕生して、なぜ人に受け入れられたのか」「なぜ、受け入れられずに消えていったのか」。当時の時代背景や社会のムードなども、元ネタの本質の一部です。このように様々な物事の本質を追及する力こそが、「パクる力」というスキルです。