ゼロからイチをつくる「ゼロイチ」という言葉もありますが、ゼロから生まれるものはありません。何かに影響を受けたり、既存の何かに着想を得てつくられたものが世に出てヒットしたとき、世の中は「これ面白いね」「この手があったのか」と評価し、「新しいもの」として認識します。この視点は、前著『人がうごくコンテンツのつくり方』『企画』でもご紹介したので、関心のある方は読んでいただければ幸いです。

 パクるのが良い理由はたくさんありますが、ここでは3つあげたいと思います。

 まず1つ目は、「他者の成功体験や失敗体験を利用できる」ということです。分かりやすい部分ですよね。言わば近道ができるということです。

 2つ目は、「すでにこの世に存在し流通している」ということです。この世にあるということは、少なくとも誰かが欲しいと思ったか、つくりたいと思ったわけで、そもそもニーズがあるということです。

 3つ目は、「人は新しいものが苦手だ」ということです。一般的には「新しいもののほうが新鮮で人の興味を引きそう」と思われていますが、人は「新しいものを警戒する本能」があります。見たことのないものを食べるのは躊躇しますよね。これは人の防衛本能です。人は、既視感や既聴感があるほうが接触するときのハードルが下がるのです。まったく知らない物事よりも、「どこかで見たことのあるもの」から足し算したり引き算したり、何かと何かを掛け算したものの方が、使い方や味や楽しみ方のイメージがしやすくて受け入れやすくなります。

リスペクトして本質を知る

 オマージュ、リスペクト、インスパイア、パロディというとカッコいい響きですが、誤解を恐れずに言えば、すべてパクりの一種です。元ネタをリスペクトしてオマージュしてインスパイアを受けてつくられたパロディを、「あれはパクりだよねw」と揶揄されるシーンはよく見られます。言葉遊びのようになりますが、いずれにせよ、物事はすべて何かに影響を受けています。