“スーパーモデル”から“イチャモン”まで

 脳研工房にはいろいろな子どもがいます。

 非常に集中力が高く、2歳半で3歳児教育の内容をこなしている子もいれば、発育過程で何らかの問題を抱えている子どももいます。

 基本的に集中力のある子は、あまりモノに動じず、五感がよく発達しています。こうした集中力は、1回の体験、あるいは同じ体験を何度か繰り返していくなかで、どれだけの情報を記憶できるかによって、大きな差が出てきます。

“スーパーモデル”と私が呼んでいる子のなかで、2歳半の子は、椅子に座り、背筋を正しく保った状態で、40分近くも同じ作業を続けられます。

 普通、この年齢の子どもは、ここまで集中力を持続させることができません。大概は10分もすると、「ママは?」「オシッコ!」などと言い始め、その周りにいる子どもたちも、連鎖反応で上半身をゴソゴソと動かし始めます。こうして集中力が途切れてしまうのです。

 ところが、集中力のある子というのは、周りにいる子どもたちがそういう状況になったとしても、ひたすら黙々と自分に与えられたノルマをこなして、ついには完了させてしまいます。

 私は集中力について、自分の好きなことを続けられることに対し、“集中力がある・ない”という評価はしません。誰かに命じられたこと、自分ではあまり好きでないことでも、しっかり長時間取り組めることを“集中力がある”と評価します。

 また、このような子どももいれば、発育過程に何らかの問題のある子どもも多いので、私はこの教室をいつからか“イチャモンクラス”と呼ぶようになりました。これは、通っているお母さんたち公認の名称です。

 始まりは、お母さんの相談からでした。
 赤ちゃんの泣き声がか細い、食欲がない、体が小さい、ハイハイができない、足の形がおかしいなど、わが子の発育や発達に不安を抱えたお母さんが、次々と相談に来られ、悩みが解決しても「もう来なくていい」と私に言われても、毎週来るものですから、そのまま自然発生的に教室となったのです。
 いろいろ問題のある子、物言いのついた子の教室ということで、“イチャモンクラス”なのです。

(次回は3月21日更新予定です。)


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久保田カヨ子(くぼた・かよこ)
1932年、大阪生まれ。脳科学の権威である京都大学名誉教授・久保田競氏の妻で2人の息子の母。約30年前に、日本における伝統的な母子相伝の育児法を見直しながら、自身がアメリカ在住時と日本で実践してきた出産・育児経験をもとに、夫・競氏の脳科学理論に裏づけされた独自の久保田式育児法《クボタメソッド》を確立。テレビなどで「脳科学おばあちゃん」として有名。2008年、株式会社『脳研工房』を立ち上げ、現在代表取締役。著書・共著書に、シリーズ23万部突破の『カヨ子ばあちゃん73の言葉』『カヨ子ばあちゃんの男の子の育て方』(以上、ダイヤモンド社)、『脳科学おばあちゃん久保田カヨ子先生の誕生から歩くまで 0~1才 脳を育むふれあい育児』(主婦の友社)などがある。ズバッとした物言いのなかに、温かく頼りがいのあるアドバイスが好評。全国からの講演依頼もあとをたた ない。
【脳研工房ホームページ】 http://www.umanma.co.jp/