思いやりの心を育てる

 それとともに大事なのは、他人を思いやる心を育てることです。
 これは、赤ちゃんのころから育むことができます。

 たとえば、私の教室にはいつも積木を出してあり、0歳児のときから、3日に1回はそれで誰かが遊んでいます。

 一辺が4cmの立方体で、最初はお母さんがこれを使って遊びます。

 まず、赤ちゃんを横抱きにして、その積木を積み上げたり、同じ色で並べたりします。赤ちゃんは好奇心が強いので、お母さんが何か楽しそうに遊んでいるのを見ると、自分も同じことをやりたがります。

 赤ちゃんが手を出してきたら、最初は「触らないでね」と言って抱きしめ、その手を遠ざけます。
 それでも、赤ちゃん自身の意思で手を動かせるようになると、必ずまた手を出してきます。
 そうしたら、少し強く「取らないで」と言って、その手を優しく跳ねのけます。

 この時点で、赤ちゃんは自分の手の動きを止めます。
すると、自分の希望が通らなかったために、機嫌を損ねて全身をよじりながら、お母さんに抱かれていることから逃れようとします。

 このような積木遊びを繰り返していくなかで、赤ちゃんは「お母さんが何をしているのか」「お母さんがなぜそんなに楽しそうなのか」ということに気づいていきます。

 これは、お母さんやその周りの人たちが、何をどう思っているのかを察するための訓練になります。
 確かに、赤ちゃんが興味を持って出してきた手を払いのけることは、やるせなく思うお母さんもいることでしょう。
 でも、やさしい子に育てるには、やさしく接するだけではダメなのです。

 親に厳しさがなく、いつも笑顔ばかりだと、子どもはその笑顔からしか親の内面を察知できず、結局子どもは、親の心を察することのないまま、甘やかされることだけを身につけてしまうのです。