中小・中堅企業を支援する企業として、知る人ぞ知る存在が中小企業投資育成だ。ベンチャーキャピタルや、銀行や信金・信組などの金融機関とは違う立ち位置で、企業の痒いところに手がとどく支援を行っている。その実態を紹介しよう。(共同通信編集委員 橋本卓典)
投資先6000社弱の中小企業投資育成
着実な安定成長を志向する中小・中堅企業にとって、長期の安定株主でありながら、創業家にありがちな内向き思考に陥らないよう、幅広い見地からの助言をしてくれる存在は極めて重要だ。
政府は経済財政運営の指針「骨太の方針」で「売上高100億円企業」を増やす方針を示した。売上高にかかわらず、実は、こうした優良企業の経営を陰で支えてきたのが中小企業投資育成(以下、投資育成)である。その知られざる取り組みを紹介しよう。
投資育成は地方自治体や金融機関などを株主とする株式会社だ。1963年の中小企業投資育成株式会社法に基づき、東京、大阪、名古屋に3社設立された。
中小企業が求める資金調達、財務基盤の強化、経営承継、承継人材と幹部人材の育成・研修、さらには日常の経営相談まで細やかに応じている。
対象エリアは、東京中小企業投資育成(以下、東京投資育成)が新潟、長野、静岡以東の18都道県、大阪投資育成が福井、滋賀、奈良、和歌山以西の24府県、名古屋投資育成が、愛知、岐阜、三重、富山、石川の5県をカバーする。
2023年3月末時点の投資先社数(累計)は投資育成3社で5886社。累計投資額は2673億6000万円に及ぶ。