今回、中川順子CFO(最高財務責任者)が内部監査担当となり、新CFOには社内で“プリンス”と呼ばれる柏木茂介氏が就任した Photo by Ryosuke Shimizu

 “永井色”をどこまで出せるのか──。野村ホールディングスが発表した人事。昨年8月に増資インサイダー取引問題を受けて“緊急登板”した永井浩二グループCEO(最高経営責任者)のお手並みに注目が集まったのだ。

 回答は異例ともいえる大ナタ。役員13人が退任し、グループ全体の異動対象者が1132人にも上る大規模なものだった。

 とりわけ、関心を集めたのが一時は105人まで膨れ上がっていた役員の数。「人事が多層化し、意思決定が滞りがち」(野村幹部)という野村のアキレス腱となっていたが、直近では80人に減らし、今回、71人にまで絞り込んだ。

 特に、海外駐在の役員はピーク時の32人から17人にまで減少。リーマン・ブラザーズ買収によって目指した世界トップクラスの投資銀行になるという旗を降ろしたことが、ここでも如実にうかがえる。

 だが、人事の中身に目を凝らすと、単なる縮小主義に陥っていないことも浮き彫りになる。アジア部門の人事がそれだ。

 長らくグローバル・マーケッツのヘッドを務めてきた山﨑啓正・専務執行役員ホールセール部門補佐がアジア戦略の要を担うことになった。そして、山﨑氏の補佐役に、野村アメリカの立ち上げに尽力し、欧州でのビジネス経験が豊富な住野豪生・野村アメリカCOO(最高執行責任者)が就くことになったからだ。

 野村は長らく、海外部門の赤字に苦しんできた。だが、米州部門は債券ビジネスが好調となり、欧州危機も小康状態となったことから欧州部門も黒字化した。

 ただ、永井CEOが最重要地域とするアジアは、黒字ながらもマーケットが未成熟な上、競合他社も多く、盤石とは言い難い。そこで海外経験が豊富な精鋭を送り込み、脱亜入欧ならぬ、“脱欧入亜”ともいえる人事を行った。