わずか5年で、大阪・道修町に本社を構える製薬企業の勢力図が一変する。武田薬品はさておき、小野薬品、塩野義製薬、住友ファーマ、田辺三菱製薬(三菱ケミカルグループの医薬品事業)の4社の通期売上高は18年度の実績と23年度の予想が表のとおりで、順位が完全に逆転することになりそうだ。
なかでも住友ファーマの凋落が顕著だ。2年前の21年度に通期売上高で過去最高の5600億円を達成したばかりだが、米国で2000億円以上を売上げていた抗精神病薬「ラツーダ」が特許切れを迎え、23年度第2四半期累計の売上高はわずか40億円にまで低迷。「パテント・クリフ」の恐ろしさを改めて印象付ける。
田辺三菱も特許切れによってじわじわと減収が続く「レミケード」に加え、「ステラーラ」にもバイオシミラーが参入する見通しとなり、収益改善が課題になる。一方、塩野義もかつての主力品の「サインバルタ」の特許切れといった減収要因があるが、ロイヤリティ収入や「ゾコーバ」に自信を見せ、30年度に売上高8000億円を掲げる。
そして、今や大阪4社のトップ企業が小野だ。売上高は23年度に5000億円、前期比11.8%増を見込む。9期連続の増収、各利益も含め過去最高を達成する見通しとなった。業績をけん引するがん免疫療法薬「オプジーボ」の売上高は、1550億円の過去最高額が期待されている。
好調な業績とは対照的に、小野の相良暁社長は冷静だ。11月1日に大阪本社で開いた決算会見で、売上高5000億円の大台に対し「これでよしでは到底ない」と発言。というのも、実は明言こそしていないものの、将来的に「1兆円企業」への成長をほのめかしている。オプジーボが14年9月の発売から10年目を迎えるなか、相良社長は今何を考えているのか。