estieでは新たにグロービス・キャピタル・パートナーズ、東京大学エッジキャピタルパートナーズ、グローバル・ブレインの3社を引受先とした第三者割当増資により約10億円の資金調達も実施。組織体制を拡充し、さらなる事業拡大を見据えている。
アナログなやりとりが主流のオフィス不動産、コロナ禍で課題が深刻に
estieで代表取締役CEOを務める平井瑛氏は大手不動産デベロッパーである三菱地所の出身。業務を通じて日本のオフィス不動産市場のデジタル化が進んでいないことに課題を感じ、東京大学時代の友人たちと立ち上げたのがestieだ。
同社では上述したestie proと、企業のオフィス探しをサポートする「estie」の2つのサービスを手掛ける。
前者はビルオーナーや管理会社と仲介会社の間の情報共有を、後者は仲介会社とエンドユーザーとなる企業の間の情報共有を後押しするのが役割。もともとは“オフィス版のSUUMO”とも言えるestieから始まった会社だが、現在はestie proに特に力を入れているという。
![estieでは物件情報や空室情報、募集賃料などオフィスビルの情報を網羅的に整理したデータベースだ。ユーザーはマップから気になる不動産の情報にすぐにアクセスできる](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/8/5/-/img_85cb872406c0dc975497717b1a60f98c895862.jpg)
冒頭でも触れた通り、estie proが扱うオフィスビルの情報は、従来アナログなかたちでやりとりされてきた。
たとえばビルオーナーは数百社の仲介会社に向けて、保有する物件の空室情報を紙やPDFで毎月配信する。一方の仲介会社側は、多い場合には数百社から1000社ものオーナーから送られてきた物件情報を社内システムなどに手作業でまとめていく。
会社の規模などに応じて細かい違いはあれど、オフィス不動産の領域ではこうした業務が日常的に発生しており、「網羅的なデジタルデータ」が存在しなかったからこそ、各社が同じような作業をしているのだという。
もともとテクノロジーを活用することで改善できる余地は大きかったが、コロナ禍で事業者側の課題が一層大きくなった。対面でのコミュニケーションが難しくなり情報交換が滞ってしまったことに加え、仲介会社の元に「さばき切れないほど」の空室情報が寄せられるようになった。
そうなると、人材が豊富な一部の大手企業を除き、多くの仲介会社は特にニーズの強いエリアなどに絞って情報を取捨選択せざるを得なくなる。結果として、エンドユーザーがいざオフィスを探そうと思った際に「物件情報が更新されていない」といった問題が発生しやすくなった。
また、ビルオーナーや管理会社は仲介会社に対して空室情報を提供するのと同時に、賃料などの募集条件を決めるために仲介会社へヒアリングも行っている。当然ながらこのヒアリングについても従来と同じようなやり方ではできなくなってしまったため、ビルオーナーや管理会社においても早急に新たな手段が必要となった。