このように『Demon's Souls』以降、一貫して高難易度のゲームをヒットさせてきたフロム・ソフトウェアが作るゲームは「難易度は図抜けて高いが、クリアできた時の達成感は最高」という評価を確立していった。

最新作『ELDEN RING』はそんな大ヒットソフト『DARK SOULS』シリーズに近い、中世ヨーロッパ的ダーク・ファンタジー世界が舞台の新しいゲーム性を持った作品だ。それに加えて世界観構築には小説『氷と炎の歌』著者のジョージ・R・R・マーティン氏を起用している。『氷と炎の歌』は8シーズンにもおよぶ人気テレビドラマシリーズとなった『ゲーム・オブ・スローンズ』の原作と言えば、聞き覚えがあるのではないだろうか。

こうした背景もあり、『ELDEN RING』は制作発表の段階からファンの間で「約束された神ゲー」と呼ばれ、『DARK SOULS III』超えの注目を浴びていたのだ。

超高難易度ゲームであっても「名作」と呼ばれる理由

映画をはじめとする映像コンテンツの場合、「不朽の名作」と呼ばれる作品は万人向けのものが多い。ところがゲームの場合、必ずしもそうとは限らない。その理由はずばり、ゲームソフトは受動的に観る作品ではなく、能動的に操作する必要があるコンテンツだからだ。

もう少し、具体的に説明しよう。

ゲームメディアの記者など、いわゆるゲーム業界の識者が「このゲームは素晴らしい」と絶賛したとしよう。それはゲームが得意で、より斬新なゲームを求めている人にとっては「過去最高の名作」という評価になるかもしれない。でも、そのゲームの難易度が驚くほど高く、初中級者がまったく楽しめなかった場合はどうなるだろう。

映像作品なら、あまりに難解な場合は「傑作ではあるが、観る人を選ぶ」「一度観ただけでは理解できなかった」などの評価も多くなる。しかしゲームの場合、特にゲーム好きの人々が「難し過ぎる」「自分には無理だった」というギブアップ宣言をするケースは少ない。「自分のゲームの腕前が低かった」と思われたくないプライドもあるのか、難易度に関するネガティブな感想は聞こえてこない。ゲームの紹介などを行うメディアの人間であれば、なおさらだろう。

難易度の高さを示すデータがある。PS4のソフトには全プレーヤーの進行度合を確認する「トロフィー」という機能があるのだが、ソフト発売の翌日(2月26日)17時の段階で1体目のボスを倒せたのは全プレーヤー中の22.4%。2体目のボスに至っては6.3%だった。これだけ話題を集めるソフト。ゲーム実況をするYouTuberの中には「クリアするまで寝ません」と豪語する者もいる中で、この結果である。参考までに、『ELDEN RING』の前週に発売されたビッグタイトル『Horizon Forbidden West』のトロフィー取得率を紹介すると、1つ目が88.3%で、2つ目が73.0%だった。PS4のゲームソフトにおけるトロフィー取得率はこれくらいが一般的だ。それにもかかわらず、『ELDEN RING』のネット上の声は絶賛ばかりである。