READYFORのサービスは支援総額の一部が利用手数料として収益になる構造のため、大型案件の存在は同社の事業においてもプラスに働く。こうしたプロジェクトが立ち上がったこともあり、同社のGMV(流通総額)は2020年6月期から2022年6月期までで年平均40%の成長を続けている。掲載されたプロジェクトの数も約2万件、累計支援額は280億円規模に拡大した。

継続的に寄付を集められる仕組みを確立

READYFORのサービスイメージ
 

事業拡大の背景としては、社会的な変化によるニーズの拡大に合わせて組織体制を強化してきたことに加えて、「継続的に寄付を集めやすくするための仕組み」の構築に向けてサービスを改良してきたことも大きい。

国内にはCAMPFIREやMakuakeを筆頭に複数のクラウドファンディングサービスが存在する。特に大手事業者はそれぞれが独自の方向へ進化を遂げる中で、READYFORはECのようなアプローチ(購入型)ではなく、寄付型にポジションを決めて事業を進めてきた。

「継続的に寄付を通じて応援し続けてもらうために、寄付者との関係性をいかに維持していくか。米国ではドナーリレーションマネジメントと言われたりもしますが、そのような取り組みを支援する方向にプロダクトやサービスの体制を進化させてきました」(米良氏)

その結果として新たに生まれたのが、2月に正式ローンチをした継続寄付サービスだ。

仕組みはシンプルで、継続的に支援してくれるマンスリーのサポートをREADYFOR上で集められるというもの。もともと何かのプロジェクトに挑戦する際などにクラウドファンディングを実施して応援を募り、そこで接点が生まれた支援者が継続的な寄付者に変わっていくケースが多いという。

「クラウドファンディングは応援をブーストする材料になるので、新規で関心を持ってくれる人を呼び込むツールとしては効果的です。一方で毎年クラウドファンディングを実施したり、継続的な手段を用意するなど、その人たちと関係性を構築し続けることも重要。その点を強化してきたことで、資金を集める側にとっては『READYFORなら何らかの手段でお金を集め続けられる』という状態が作れてきています」(米良氏)

クラウドファンディングサービスから「寄付・補助金のインフラ」へ

READYFORにとって、クラウドファンディングを軸に約10年にわたって築き上げてきた「3万件近くの団体とのネットワーク」は強力な資産だ。

たとえば営利企業であれば帝国データバンクなどの企業が独自のデータベースを構築しているが、READYFORが得意とするような「広義の非営利領域」においては同じようなデータベースがない。認定NPOなどの制度は存在するものの「どの団体が本当に良いのか」がわかりづらく、支援の対象が狭い範囲に限定しやすかったと米良氏は話す。