エン・ジャパンが運営するミドル世代のための転職サイト「ミドルの転職」が実施した調査「スタートアップへの転職」によれば、回答者の76%が「スタートアップ企業へ転職したい」と言っており、転職意欲が最も高い年代が「50代」だったという。

スタートアップに興味を持ったきっかけを見てみると、「会社と共に成長する経験をすることで、自身の成長も実現したいと思った」「年功序列の環境でなく、自由に自分の才能を発揮し、評価してもらえそうだから」といった回答が並ぶ。

マクロ環境が変化しており、先行きが見通しづらい時代になっているからこそ、自分自身を成長させられそうな環境として、スタートアップを選ぶ。そういう考えを持っている人が増えてきていることが、上記のアンケート結果などからわかる。

かくいう筆者も8〜9年前にインターンを経て、スタートアップで働いていたことがある。当時のスタートアップは、1〜2万円という格安の価格で求人を掲載できた「Wantedly(ウォンテッドリー)」に求人情報を掲載し、熱意のある学生や若手などを採用するのが一般的だった。

今ではさまざまな求人媒体でスタートアップの求人情報を見ると思うが、10年ほど前はWantedlyくらいしかスタートアップの求人情報が載っていなかった(スタートアップ側は掲載料金を払える求人媒体がWantedlyしかなかった、という側面もあるが……)。

また、いきなり「正社員になる」というルートではなく、スタートアップに憧れを持った学生や若手がインターンとしてジョインし、一定のパフォーマンスが発揮できたら正社員として雇用されるパターンが多かったように思う。

資金調達額も数百万円〜数千万円が一般的で今ほど資金も潤沢ではなかったため、給与も低かった。会社の成長のために夜遅くまで、また休日も惜しまずに働く一方で給与が低いことから、“やりがい搾取”などと揶揄されることもあったが、今は全く異なる。平均給与も上がっているほか、ストックオプション(SO)を発行する制度や働く環境を整えるスタートアップも増えてきている。

この10年で大きく変わった日本のスタートアップ・エコシステム。次回以降は具体的なデータをもとに、“キラキラ”でも“やりがい搾取”でもない、スタートアップに関する「ヒトとカネの実態」をひも解いていく。