馬田:「病児保育」だけでなく「小規模保育所」や「障害児保育」もフローレンスは手がけています。
駒崎:待機児童問題を解決するために、「おうち保育園」を経て小規模認可保育園というものをつくったり、医療的ケアが必要な子どもの預け先がないという問題については、「障害児保育園ヘレン」を設立して運営したりしています。こういった社会問題に対して、事業で解決していくことを、続けてきました。
政策起業家というキャリアは、図らずも30代で積むことになりました。目の前の社会課題を事業で解決はしてきたけれど、目の前の人を助けることに終始すると、社会的なインパクトはどうしても限られてしまう。自分たち以外の人が、自分たちのモデルを模倣して実践できれば、点でなく面で解決していけると考えました。そのためには、政策を変えていくということが近道だと気づいたのです。
民間の立場から、国の政策や制度を変えていくことに踏み込んだひとつの成功事例が、待機児童問題です。これまでの認可保育園は定員20名以上が原則でしたが、6名〜19名でも国から認可がおりるようになり、「おうち保育園」がモデルとなった小規模保育は、「小規模認可保育園」として認められるようになりました。その結果、保育園が増えて待機児童問題は解消へ向けて大きく動きました。
馬田:政策を考える人たちと接点を持ったきっかけについても、教えてください。
駒崎:30歳の時です。鳩山由紀夫内閣の際に、ポリティカルアポインティー(政治任用制)という政府の要請があり、2019年の半年間、内閣府で官僚の職に就きました。官邸で働くことを通じて、さまざまな政策をつくる経験をさせていただきましたが、どこのスイッチを押すと政策が通り、何があると通らないのかを学べたことが、非常に大きな経験でした。そこから、政策を変えるという働きかけをするようになりました。
20代は社会起業家、30代は政策起業家というキャリアを歩んできて、43歳の今は「やっぱり下の世代を育てなきゃいけないな」と考えて、社会起業家を育成する、社会起業道場を始めました。そしてもうひとつ、今年から政策起業道場も始めたところです。これは社会起業道場の政策起業家版で、政策起業家を育成するものです。以上が、20代から現在までの僕のキャリアになります。
フローレンスが、社会起業家を輩出できる理由
馬田:フローレンスは社会起業家を多数輩出している印象ですが、それはなぜでしょうか。何か仕組みがあるのですか。