社会起業家や政策起業家といったように、バリエーションがある。それは、社会課題を解決し価値を創造するという手法の中で、ビジネスもあれば社会起業もあれば制度を変えるという方法もあるという分岐だと思います。

その上で、馬田さんのご質問にお答えしますが、「課題を発見し解決することを信じられる、かつ実践しようとする想い」が、起業家教育の核にあるべきではないかと考えます。その実現方法として、ビジネスもあれば市場を介さない社会起業もあれば、政策起業もある。どれを選んでもいいわけです。

「何が課題か」「何に困っているのか」に共感し、それを何とか解決したいという情熱が駆動され、そのための手段を最後に考える。そしてその手段を、仲間と共に実行していくという、チームメイキングやチームビルディング。チームによって一つのことを成すというサイクルこそが、起業家教育で求められていることだと思います。

つまり、最初にやるべきは「誰が困っているのか」に目を向けること。身の回りの負に目を向けて耳を傾けて、その事象に気づき何とかしたいと思う。何とかする方法を自分たちで考えてみる。これを小学校からやっていく。手法については、年齢が上がるごとに洗練されていくと思います。「はい、何か物を売りましょう」ということではなくて、やはり課題を発見することです。

課題を発見してそれを批評するのは、教育現場でありがちなアクションですが、大事なのは、実行です。課題発見となると、頭で考えることが多くなるけれど、起業家の仕事は「実行していくこと」だからこそ、現場に出ることが必要です。

画像提供:フローレンス
画像提供:フローレンス

現場で、困難を抱える家庭に出合うようなことがあれば、「何とかしなきゃいけない」という想いに打たれるかもしれません。それこそが、自分を駆動することへつながるので、教室の外へ出ることが求められると思います。

馬田:課題の発見と聞くと、例えば「デザイン思考」を思い浮かべるビジネスパーソンもいると思いますが、そういった手法は使えるのでしょうか。

駒崎:デザイン思考については専門ではないので詳しくはないですが、課題を起点にさまざまな事象をデザインしながら進めていくという意味では、デザイン思考的な側面はあるので、使えるのだと思います。ただし、起業で最も重要なのは「感情」です。左脳的にさまざまなフレームワークを使って課題を整理して解決に導くというよりは、「何とかしなければいけない」「実現させたい」という情熱がなければいけない。