投資テーマとしては、仕込みという観点では、DX領域はすでに大きなテーマに関しては埋まりつつあり、ディープテックやWeb3の領域の注目度が高まりつつあるものの、未知数な点も多く、端境期(はざかいき、物事の入れ替わりの時期)と言えるのではないでしょうか。ただし、過去においても、このような調整局面と端境期に新たに骨太スタートアップが誕生する傾向があるため、今後新たな素晴らしいスタートアップの登場に期待したいと思います。
ポジティブな観点では、より世界を目指す起業家や起業家を支える人材が増加し、すでに上場している企業も含めて、「日本だけで小さくやっていても仕方ない」と考えるスタートアップが増加しているのは、心強い傾向です。一方で、そのような会社は円安の影響を受けやすいという新たな課題にも直面したのも事実です。
一点、付言しておきたいのは、マクロ環境の変化に応じて「しゃがむ」ことは決してネガティブな要素ではありません。むしろリスクを取ってチャレンジしている会社ほど、環境変化に応じてブレーキをかける必要性があります。無風だとすればそれはそれで問題ですし、ブレーキをかけると言っても立ち止まるわけではありません。もちろん、変化を予測してあらかじめ手を打てるのが最も質の高い経営力ではあるものの、これまでチャレンジしてきたことを称えながら、ゲームルールの変化に合わせた新たな問いを立てることにフォーカスできることが大事だと思います。
2022年に注目した・盛り上がったと感じる領域、テーマ、テクノロジー、プロダクトなどを教えてください。
・Vertical SaaSが次のステージへ
適切なエントリーポイントで初期的に「ツール」としてマーケットシェアを獲得できた企業が、事業を多角化し「プラットフォーム」への道のりを登り始めました。
・ディープテックやクライメイトテック、Web3などの新領域
社会的課題の解決や政府の支援を受ける、いくつかの新領域の勃興が見られました。特に地域の国立大学周辺の研究テーマの力強さが印象に残っています。
・エンタープライズ(大企業)向けサービスや連携の増加
ソフトウェアサービスにせよソリューションにせよ、大企業向けとの事業上のトランザクションが増えると同時に、各社が事業開発人材の採用に奔走した1年でした。
2023年のスタートアップシーンや投資環境はどのように変化すると予想しますか。
基本的には、外部環境として2022年の流れが大きく変わることはないと認識しています。したがって、2022年内に適切にチューニングできた企業が新たな成長に向けて生き残ることができるでしょうし、バリュエーションが資本市場との相関性の中で適切な水準に調整されれば、むしろ新規投資は旺盛になるのではないかと思います。