ファイナンス手法の多様化も背景に2023年のM&Aはさらに活発化
2022年同様、2023年もキャッシュリッチ企業によるM&Aが続くことは間違いないだろう。そんな中、注目したいのは新たなプレーヤーの動向だ。SaaS領域で言えば、freeeとマネーフォワードによるM&A合戦に割って入る企業が出てくるかどうか。OBC(オービックビジネスコンサルタント)あたりは可能性がありそうに思われる。
M&Aの買い手になり得るキャッシュリッチ企業としては、グリーやGMOインターネットグループの動きも気になる。また、コロナによる巣ごもり需要で業績を伸ばしたECサイト構築支援のBASEも、2020年に海外公募増資で118億円を調達し、勝ち組企業の1つとなっている。今後M&A戦略を展開していく可能性は十分にあるだろう。
勝ち組企業をM&Aに向かわせ得るファクターとして、ファイナンス手法が多様化していることもポイントに挙げられる。スタートアップの資金調達は従来、エクイティで行われるケースがほとんどだったが、デットで運転資金を賄うことが可能になれば、その分、エクイティで調達した資金は積極的にM&Aに回せるようになる。
2022年はアルバイト仲介アプリのタイミー、法人カードのUPSIDERがデットによる大型調達を実施した。2023年はこのトレンドがさらに波及し、M&Aの新たな買い手となるスタートアップが出てくることも考えられる。
岸田政権のスタートアップ支援策、大企業によるM&Aの呼び水となるか
岸田政権下のスタートアップ支援策に関しては、2022年8月に初のスタートアップ担当大臣が任命され、11月には「スタートアップ育成5か年計画」が発表された。計画に盛り込まれた各種の施策案が今後どんな経過をたどるのか、今年の動きが注目される。
一連の施策案のうち、M&A関連で特に話題を集めているのは減税策。M&A買収額の25%分が法人税の課税所得から控除される案が出ているようだ。これは減税効果そのもののインパクトはさほど大きいとは言えないものの、大企業によるスタートアップM&Aの呼び水となる可能性を秘めている。
スタートアップと大企業の組み合わせで言えば、2022年は入退院調整支援の3Sunnyが帝人にグループイン。資金調達からのM&Aへと踏み切っている。25%減税が実現すれば、同様にスタートアップとのアライアンス、さらにはM&Aに乗り出す大企業が増えていくことが期待される。