逆風下で進む、スタートアップ成長プロセスの進化

ダウンラウンドIPOを選択するスタートアップは、今年も一定数出てくるだろう。その結果として、IPO偏重と言われる日本国内でも、M&A活用を早くから想定に入れるスタートアップが増え、将来的なM&Aの活性化へと向かう転機となっていくかもしれない。

IPO準備とM&A交渉を並行して進める「デュアル・トラック・プロセス」も、現在の不況下で浸透が進みそうだ。デュアル・トラック・プロセスは、米国ではすでに一般化しており、日本では2021年にPaidyが実施して話題となった。

当社でも昨年、IPO準備を走らせながら、チェンジへのグループインを決めたDFA Roboticsのケースを支援した。シリアルアントレプレナーでもあるDFA Robotics代表取締役の波多野昌昭氏は、引き続きチェンジのもとでNASDAQ上場を目指している。日本のスタートアップの成長プロセスの多様化を象徴する事例であり、後に続くスタートアップも今後増えるだろう。

M&A後に急成長した企業としては、2017年にKDDIにグループインし、「スイングバイIPO」(大企業のアセット活用によりIPOを目指すこと)という言葉が誕生するきっかけとなったソラコムが、2022年11月に上場を申請。また、スタートアップ同士のM&Aでは、2018年にGA technologiesにグループインしたイタンジが、2022年はグループの大幅な損益改善を支える存在へと成長を遂げている。

スタートアップ同士のM&Aが進み、企業規模が拡大していけば、「スタートアップ育成5か年計画」に盛り込まれた目標「ユニコーン100社」の実現にも近づく。ビジネスの特性上、経営資源やケイパビリティがモジュール化されている企業などは、特にM&Aによるシナジー効果が見込まれる。2023年もスタートアップにとっては冬の時代が続きそうな中、アライアンスの力でグローバルな存在感を示す企業が増えていくことに期待したい。