共同創業者がいることで本当に成功確率が上がるのか、についてはシリコンバレーでも諸説あり、断定的なデータはない。しかし米国では対等な共同創業者が多くのスタートアップを運営する前提で、契約上のツールキットが整備されているのは事実だ。
日本では逆に、共同創業者というタイトルは使われるが、最初からいる創業者間の立場や株式持分に大きな差があるパターンが圧倒的に多いと感じる。持分については9対1とか8対2とか、対等な共同創業者というよりも、サイドキック(助手)的な扱いだ。
これは、ケースバイケースなので、一概に言ってしまうのは危険だが、考え方として、共同創業者を迎え入れるにあたって最も重要なのは信頼関係だ。心から信頼できて、10年かかっても成功に向かって一緒に事に取り掛かれる人がいるのであれば、最初から引き込んだ方がいい。そして、まだ成功するかどうかも分からない(むしろ成功しない確率の方が高い)時点で、成功した時の取り分を決めることにエネルギーを費やすよりも、お互い対等の立場で信頼しあえる関係を、持分比率にも反映させた方がよいし、それができる人とチームを組むのが理想だ。
日本は法制度的にそれが若干やりにくい環境にある。つまりツールキットが追いついていないと言える。わかりやすくするために、米国の例を先に説明しよう。
米国では、典型的には最初の優先株調達の時に「リバースベスティング」といって、すでに共同創業者が持っている株式のいずれも、会社が一定期間、原価(共同創業者が取得した価格)で買い取れる仕組みが導入される。そして会社が買い取れる分が、時間が経つに応じて減っていく(一般的には4年間でゼロになる)。例えば、2年目で共同創業者の1人が何らかの理由で辞めた場合、その人が持っていた株の半分は、会社が買い取る。途中で信頼関係が崩れた場合や、共同創業者1人の気が変わったときなど、辞める人が大事な会社の株を持っていかないようにする仕組みだ。
日本の場合は会社法の規定で、スタートアップが自社株を買い取ることがほぼできない。そのため、上記のような仕組みがそのまま導入しにくく、リバースべスティングで買い取る主体が他の株主になることがほとんどだ。また税制の違いで、原価では買い取りにくく、時価での買い取りとされるのが一般的であり、創業者が辞める際に、誰がいくらで買い取るのかについて、必ず一悶着(ひともんちゃく)あるといってよい。