このラチェットの世界合計で110万本という本数も、決して喜べる数字ではない。PS4のヒット作では『アンチャーテッド  海賊王と最後の秘宝』が1600万本、『マーベル スパイダーマン』が1320万本、『ゴッド・オブ・ウォー』が1200万本売れている。PS5専用(または+PC)で発売したことが販売本数の足かせとなるなら、ゲームのグラフィックを少し下げてでもPS4用に発売し、「PS4のソフトですがPS5でも遊べます」または「PS4版購入者は、PS5版のダウンロード版を安価で販売します」という売り方をしたほうがローリスクなのは明らかだ。PS5本体を売り伸ばしたいはずのSIEですら、自社発売のソフトをPS5専用にはせず、前述した売り方を続けているというのが現状である。

魅力的な専用ソフトがけん引することもできないPS5は、どうやって売り伸ばしていけばいいのか──それは、PS5ビジネスに関わるハード&ソフトメーカーの誰もが頭を抱えてしまう問題だった。

「すごさ」が伝わりづらいPS5

PS5は自身のすごさや価値を伝えづらい商品であったことも、普及が思うように進まなかった原因の1つだった。任天堂のハードウェアであれば、WiiやNintendo 3DSとNintendo Switchとを比較すると「テレビにつないでも、携帯しても、どちらでも遊べる」というわかりやすさに加えて、『マリオカート』『どうぶつの森』『スプラトゥーン』などの新作がそのハードでしか発売されないという、強力な魅力がある。

それに比べてPS4ユーザーにPS5の魅力を伝えようとする要素は、以下のようになる。

・4K解像度でHDRカラー対応
・レイトレーシング(リアルな光源処理)に対応
・3Dサウンド
・L2/R2トリガーを引く負荷が変化
・ロード時間の高速化
・Wi-Fi6対応

PS5の本体価格が高額になった一番の要因は、高速なCPUやビデオボードを採用したことにある。そしてそのCPUやビデオボードを利用した画面の高画質化が、PS5の一番のセールスポイントだ。より細かく、より遠くの風景まで、リアルな陰影処理が施されたフォトリアルなグラフィック表示。これに対抗できるゲーミングPCを作るためには15万~20万円はかかるため、6万円で購入できるPS5のコストパフォーマンスがいかに高いかがわかるはずだ。

しかし、である。4K画質のゲームを求めている人が、どれほどいるのだろうか。