ビジネスの観点では“マッチング以降”の段階でも、ユーザーとの接点や収益化のタイミングを作り出せる点が、メタバースを活用したマッチングサービスの特徴だ。
「基本的にマッチングアプリが関与できるのは、マッチングするまでのところで、マッチング以降はマネタイズポイントはありません。でもメタバースの場合は、それ以降で収益化のチャンスがあります。たとえばアバター用の服やアクセサリーといった商品の販売もそうです。リアルな外見は自分でコントールできない部分もありますが、メタバース内での外見は自分でなりたい姿になれます」(佐藤氏)
これまではマッチングアルゴリズムの開発などに力を入れてきたが、今後はアバターやメタバース空間上のコンテンツの拡充にも力を入れていく計画。2022年10月にはANRIやミクシィ創業者の笠原健治氏などから1億円の資金調達も実施した。
「メタバースには(トレンドに)乗っているだけのメタバースと本質的なメタバースの2種類があると思うんです。前者は、本来メタバースにしなくてもいいようなもの。一方で音楽などのライブや恋愛は本当にメタバースにする価値があると考えています。リアルなデートも楽しいけれど、メタバースでのデートも楽しい。そんな世界観を広げていきたいです」(佐藤氏)
メタバースでの恋愛を広げていく上では、もちろん課題もある。それを望むユーザーがどれくらい増えるのかという問題だけでなく「ハードウェア」の進化と普及も必要だ。
実際にMemoriaの場合もベータ版まではVRヘッドセットが必要だったことから、「使ってみたいけど、ヘッドセットを持っていないので使えない」という声が複数人から届いた。PCで利用する場合は「(VRと比べて)身振り手振りが伝わらない、『そこにいる感』が薄まってしまう側面はある」(佐藤氏)が、まずは少しでも多くのユーザーが体験できるように、PCしか保有していなくても楽しめるようにしていきたいという。
これまでもテクノロジーやデバイスの進化に合わせて、“マッチングサービス”のかたちが変わってきた。まさにVRやメタバースの台頭とともに、国内外でバーチャルマッチングアプリが少しずつ生まれ始めている状況だ。
従来のマッチングアプリとはアプローチが異なるものの、ゲームアプリの「恋庭」なども領域は近しい。四半期の売上が3億円を超える同サービスにおいては、今後「マッチング×メタバース」という切り口で収益拡大を狙う方針が明かされている。