これに加え、2014年には1900円の買い切り型で、PSP専用ソフトだった『モンスターハンターポータブル 2nd G』のiOS版もリリースするなど、さまざまなアプローチでスマートフォン用アプリを配信してきた。
ただしモンハンは、同じモンスターを何度も討伐して素材を集め、その素材を使って強力な武器や防具を作り、より強いモンスターへ挑むという、「ハックアンドスラッシュ(ハクスラ)」こそが醍醐味のゲームだ。課金することで強力な武器や防具が手に入ってしまうと、「素材を手に入れるためにモンスターを討伐する」という本来の目的が薄れてしまい、ユーザーからの反発を受ける可能性が高い。そう考えると、モンハンに課金やガチャといったシステムは組み込みづらく、「何に課金させるか」が非常に難しかったというのが筆者の推論だ。
そして2023年4月22日時点でカプコンのスマートフォンアプリ一覧ページを見てみると、カプコンがiOSまたはAndroid OS向けに配信中のアプリは、全部で20タイトル。しかも基本無料のアプリはなく、すべて買い切り型のアプリだ。
過去のアプリ商品群を見ると、カプコンにとってモンハンIPによるスマートフォンアプリへの挑戦は念願だったに違いない。そんな状況下でNianticからの打診があったと考えれば、カプコン・辻本専務の「当日のうちに返事をした」というスピード感もうなずける。なにせ、NianticはすでにポケモンGOを世界的にヒットさせており、スマートフォンアプリ業界における世界的なヒットメーカーである。これまで悩んでいた課金部分のシステムも、Nianticならば解決してくれるという判断を下したのではないだろうか。
また、Nianticのこれまでの展開を考えれば、グローバルでの展開も難しくないだろう。無料アプリならばダウンロード数も膨大となり、『モンスターハンター』というIPの知名度は全世界に轟く。MHWから始まったモンハンIPの世界展開はさらに拡大し、カプコンが作る次回作のセールスにも大きく貢献してくれるだろう。
位置ゲームの“マンネリ感”を払拭するアクション要素
ところでMonster Hunter Nowの話は、Nianticからカプコンに打診されたものだという。つまり、NianticにとってもモンハンというIPが必要だったと考えるべきだ。
Nianticはもともと『Ingress』で、スマートフォン用のGPSを利用した陣取りゲームを提供していた。Googleからの独立後は、このノウハウを利用してポケモンGOを制作。次いで『ハリー・ポッター:魔法同盟』(現在はサービス終了)の配信を経て、ピクミン ブルームを配信するなど、いわゆる「位置ゲーム」を中心に制作・配信してきた企業だ。2023年1月には『NBA All-World』というバスケットボールの位置ゲームを配信。来たる5月9日には、位置情報を利用するARデジタルペットアプリ『ペリドット』の配信も予定されている。