DropboxやAirbnbを輩出した名門アクセラレーターが今夏も開催
Dropbox、Airbnb、Brex──。今や著名となった数多くのスタートアップを輩出してきた米国の名門アクセラレーター、Y Combinator。シード期のスタートアップに小額を投資し、3カ月間で集中的に指導するプログラムを毎年2回、夏と冬に開催している。新進気鋭なスタートアップが集まることから、卒業生が成果を発表するデモデイには多くの投資家やメディアが参加する。
2020年夏季のプログラムは、コロナ禍で史上初のオンライン展開となった。Y CombinatorのパートナーでCEOのMichael Seibel(マイケル・サイベル)氏いわく、ZoomやSlackを活用しオンライン展開することで、今季は26カ国・15の時間帯からスタートアップが参加したという。
米時間8月24日〜25日に行われたデモデイも、2020年冬季プログラムに次ぎ、オンライン開催となった。登壇した198社のスタートアップは各社1枚の資料を用意し、約1分間の短い時間の中でピッチした。
コロナ禍が影響して、今回のY Combinatorでは「ポストコロナ」を意識したサービスが多く見られた。リモートワークで活用できるツール、オンラインでイベントを開催できるプラットフォームや、飲食店や小売店向けのデリバリーソリューションなどだ。ヘルスケアやバイオテックの領域でも、新型コロナウイルス対策、メンタルケア、遠隔医療、といったテーマが目立った。その他にも、「インドのユニクロ」、「AirbnbをD2Cブランドのショールーム化」など、ユニークな事業も見られた。
筆者にとって最も強烈に印象に残っているスタートアップは、米国やスペインで事業を展開するKULEANAだ。同社は植物性素材をもとに、生マグロの代替食品を開発している。CEOのJasec Prus氏は「なぜ我々は今、カメラやマスク越しに会話をしているのか?それは我々が動物を食すことで不健康になっているからです。より優れた食品システムが今すぐに必要だ」と言い放ち、ピッチを締め括った。アクセラレータープログラムに参加するのは、もはや狭義の“ITスタートアップ”だけでではないことを、あらためて認識させられた。サスティナビリティの領域ではKULEANAの他にも、二酸化炭素排出量の削減を目指すCarbonChainやminimumなど、志の高いスタートアップが目立った。