同社が短期間で急成長する様子を見て伸びてるスタートアップの勢いを肌で感じるとともに、Recipioの状況を省みると同じようなインパクトを生み出せていないことを痛感したという。
世の中を変えるようなプロダクトを作るには、もう一度市場選択と参入のタイミングを考えなければならない。国内の市場動向や海外の事例などもリサーチした結果「QuickGetをやるなら今しかない」と考え準備にとりかかった。今から約1年前、昨年9月のことだ。
「めんどくさいから全部届けて」に応える
まずは簡単なiOSアプリとLINEから注文を受け付け、コンビニなどで商品を買って届ける「買い物代行モデル」の形で試験的にプロジェクトを始めた。
もちろん最初から上手くいくほど甘くはない。注文がゼロの日も珍しくなく、数件注文が入るだけでも喜んだ。六本木のカフェで「QuickGetというアプリが流行ってるらしいよ」と少し大きめの声で話してみたり、スーパーやコンビニから少し距離のあるマンションを中心にポスティングをしてみたり。サービスを知ってもらうために出来そうなことに泥臭く取り組む日々が続いた。
台風の日はUber Eatsなどが混雑するので自社サービスを使ってもらえるチャンス。そう考え、雨の中、自分たちで自転車を漕ぎながら必死で配送したこともあったという。
「先輩の起業家の方や周囲の友人に話をしても反対されることの方が多かったです。最初は思ったように注文が入らず辛い時もありましたが、それでも自分の中では絶対にいけるという自信がありました。未来から逆算した時に、欲しいものがすぐに届くという世界は間違いなくくるはずだと信じていたし、何よりも自分自身がQuickGetのようなサービスをずっと欲しいと思っていたので」(平塚氏)
粘りながら続けていくうちに、少しずつ注文が入るようになり繰り返し利用するユーザーも出てきた。ユーザー層や購入する商品はばらけていたが、ヒアリングをしてみると「自分で買いに行くのがめんどうだったので使ってみた」という共通点があった。
「『めんどくさい』というニーズはものすごく大きいと思うんです。今の時代、映画や音楽はNetflix、Spotifyといったサブスクサービスで様々なコンテンツにアクセスできるし、友達とゲームをするにしてもフォートナイトでボイスチャットを繋げばどこにいても一緒に楽しめる。わざわざ外に行かなくても家の中で十分完結するようになってきています」