コンパクトミラーのごとく折りたたんで持ち運び、必要な時に展開する。女性の小さなポケットにもスッポリ収まる携帯性と、折りたたんで開くというギミック感的な面白さを融合させている。ボディの高級感も相まって、ファッションアイテムとしてのスマートフォンを体現する存在となっている。
このスマホは2020年2月、4G LTE対応モデルとして発表されたGalaxy Z Flipがベースだ。5Gに対応し、ボディの仕上げが変わった点を除けば、4G版そのままだ。新設計のヒンジ機構や、超薄型のカバーガラスももちろん装備している。
折りたたんだ状態ではスマホとしては使えないが、天面に小窓を備えている。通知表示用の画面かと思えば実はタッチパネルで、カメラのプレビューを表示して自分撮りができる。こうした小さなギミックも、スマホへの愛着を育てるための仕掛けとして機能するだろう。
折りたたんだものを開くという所作は、日常生活の中で多く行うものだ。それをスマホの画面で行うのは違和感がないし、自然と慣れる。振り返ればスマホ以前、折りたたみケータイで何度となく行っていた操作だから、親しみやすいのも当然といえば当然だろう。
3Gの全盛期、折りたたみケータイは多機能化し、小型、薄型を追い求めていった。それがiPhoneの登場以降、スマホに取って代わられた。その背景には、4G LTEという新しい通信規格の浸透がある。
今、スマートフォンはコモディティ化し、差別化が難しくなっている。スマホでは5Gのローンチとともに、薄型化の追求が一度薄れ、大画面化のトレンドに移行しつつある。折りたたみディスプレイはその大画面化のニーズに応えつつ、携帯性も維持する折衷案の1つと言える。フォルダブルディスプレイの製造技術が順調に発展すれば、折りたたみスマホは近い将来、より身近な存在になるだろう。
しかし、フォルダブルであってもスマホにはスマホ。従来と同じ使い方をしているだけでは、スマホに取って代わるほどの影響力を持つには至らないだろう。重要なのは5Gという新技術が普及した近未来で、どのような“キラーコンテンツ”が誕生し、ヒトと通信との関係に変化をもたらすのかだ。
スマホというフォームファクターがどのような変化を迎えるのか、その変化においてフォルダブル技術がどのような役割を果たすことになるのか、その将来像は未だ明確ではない。