5Gがスマホにもたらすものは、光回線並みの超高速通信だ。5Gがその規格通りの性能を発揮するようになれば、たとえば2時間の映画コンテンツを、3秒でダウンロードできるようになると言われている。

ただし、5Gは言ってしまえば無線通信技術に過ぎない。基地局とスマホの間の通信が高速化されたところで、今までと同じスマホの使い方をしているのでは意味はない。5Gにフィットした、新たなコンテンツの登場が期待される。

折りたたみ2機種は「au 5G」対応スマホとして発表された

5Gの普及とキラーコンテンツの登場には「鶏が先か、卵が先か」のジレンマの構図が含まれている。5Gが普及すれば、自然と新しいスマホの使い方に気付くだろう。そのうち5Gに最適化されたキラーコンテンツが登場し、5Gの爆発的普及につながるかもしれない。

しかし現時点の5Gには普及の鍵となるようなコンテンツがまだない上、エリアも狭いため使用感は4G LTEとほぼ変わらない。5Gスマホを手にとってもらうためには“魅力”を付ける必要があった。

5Gでは固定回線並みの通信速度が出せる。現時点では“スポット”程度にとどまるサービスエリアの拡充が急務だ

フォルダブルは、その解決策の1つだ。ディスプレイを折りたためれば、携帯性と使い心地の良さを兼ね備えた、新しいスマホのかたちが提案できる。

折りたためるディスプレイのアイデア自体は、数年前から存在したものだ。今のスマホに使われている有機ELディスプレイの発光層は折り曲げに耐えうる構造をしており、後はいかに安定して折りたためる構造を実現するかが課題だった。特殊なヒンジ構造が加わるため、従来の板状スマートフォンよりは高額になるが、これまでにない利用体験を提案できる。5Gの先進性をアピールするのには最適な存在だった。

開けば大画面、閉じれば縦長の「Galaxy Z Fold2 5G」

前置きが長くなったが、ここからは実際のデバイスを観察していこう。Galaxy Z Fold2 5GとGalaxy Z Flip 5Gは、サムスンの折りたたみスマホの第2世代に相当するモデルだ。

縦開きと横開きの違いのみならず、利用スタイルもまったく異なる

Galaxy Z Fold2 5Gは、“横開き”の折りたたみディスプレイを搭載する。手帳のように開いて大画面で使えるスマートフォンだ。さらに外側にもディスプレイを装備し、畳んだ状態でも縦長のスマホのように使える。

Galaxy Z Fold2 5G(中央)は、大画面をコンパクトに持ち運べるスマートフォンだ(左はiPhone 11 Pro、右はXperia 5 II)

前世代モデルの「Galaxy Fold」は、サムスンとして初のフォルダブルスマホだった。この機種は新しいスマホ体験を提案した記念すべき1台だが、いくつかの不満点を指摘されるなど、評判は必ずしも良いものだけではなかった。新機構の折りたたみヒンジの耐久性には疑問符が付いた。発売前にはメディア向けに配布した試作機で壊れやすさを指摘され、サムスンが機構設計を見直すために発売を延期した経緯もある。外側のディスプレイの小ささや、ディスプレイ保護材に樹脂素材を用いたことによる見た目のチープさも不満のタネだった。