開発者のチャレンジをこまめにレポートしたり、好みに応じたプロジェクトを紹介するレコメンドエンジンを強化したり。消費者側の「応援したい」の熱量を高め、維持していく機能に一層注力したことが、「応援購入のリピート率7割超」という結果につながっている。
「価値ある挑戦者」が生まれる場でありたい
かつてベトナムでベンチャーキャピタル事業に携わっていた中山氏には、「ものづくり大国だったはずの日本の底力を取り戻したい」という思いがある。
その思いは開発者の選定基準にも表れており、「もの・サービス自体が面白いかどうかのジャッジはしない」。つまり、それが世に出るべきかどうかは、消費者に委ねたいのだという。その一方で、Makuakeはプロジェクト掲載前から商品の納品までモニタリング体制を構築しているほか、トラブル時における消費者保護の対応を実施している。例えば、先日アイスシルク生地を使用したマスクの生地が“絹”ではなく“化学繊維”だったことが問題視されていたが、Makuakeが実行者に返金対応を促し、現在は絹と勘違いして応援購入してしまった人に関しては返金対応の手続きをとっている。
また、Makuakeに掲載されているプロジェクトが中国の大手通販サイト「AliExpress(アリエクスプレス)」の転売ではないか、といった声が聞かれることもあるが、これは正規の代理店と確認をした上で国内進出のサポートをしているという。
「僕らも創業時は400社以上回っても相手にされず苦しい時期も何度も味わってきた。新しい挑戦を始める時に、組織の大も中も小も関係ありません。国内外問わず、世の中が求める価値ある挑戦者が生まれる場でありたいんですし、広まるべきものがきちんと広まって欲しいと思うんです」(中山氏)
事業を続けるうちに希望を感じられたのが、“地方の出る杭”の誕生だ。例えば、刃物の町・岐阜県関市で創業50年を迎える金属加工プレスメーカー、ツカダは、板厚0.2mmのステンレス鋼板を使用した名刺入れを制作・販売するプロジェクトを17年秋に実施。応援購入額は2940%もの達成率を記録し、受注型だった同社のビジネスモデルを変える一つの転換点となった。
「最初は、地元の信用金庫さんからのご相談から始まったのですが、プロジェクト達成後は銀行の融資枠も広がったと聞いています。さらに嬉しかったのは、ツカダさんに刺激される形で、近隣の会社の士気も高まって地域が元気になってきたという波及効果です。野球の野茂英雄元選手が初めてメジャーリーグに挑戦して、後の選手も続いたように、地域の成功モデルをつくる橋渡しになれたらと思っています」(中山氏)