日本にもまだファッションへの熱量が残っている

その真摯なものづくりはいま、静かな熱狂を生み出している。コロナ禍の影響でニューヨークがロックダウンし、パリで予定されていた展示会もキャンセルになったことで、東京のみで開催となった2020年8月の受注会。招待客のみの案内ながら、連日人づてにさまざまな顧客が訪れ、1週間で1000万円以上を売り上げた。

「38度の炎天下で、新型コロナの第2波も懸念されていて、最寄駅から徒歩11分の西麻布のギャラリーでプレオーダーしかなくて……売れる要素なんて1つもない。それでも卸の半年の売上をはるかに上回った。皆さん、おっしゃるんですよ。『ブランドはどこも似たようなデザインばかりで、何を買えばいいか分からなかった。自分らしいものが欲しかった』って。こんなときだからこそ、大量生産の枠組みにハマらないものづくりに価値を感じてもらえた。この種をしっかりと伸ばしていきたいんです」(大丸氏)

コロナ禍において、老舗アパレルの倒産や著名ブランドのクローズなどいくつもの暗い話題が続いた。それでもなお、日本にはファッションへの熱量がまだ残っていると大丸は言う。

大丸製作所2はD2Cを強化すべく、公式オンラインストアを今年11月末にオープン。12月初旬には東京・六本木でのポップアップショップを開催し、盛況を博した。今後、VCからの資金調達も予定しており、この勢いを加速させていく。

「ニューヨークで成功しているブランドを見ていると、立ち上げ段階から投資家を探して、経営陣とデザインチームが独立していて、3本柱でやっていくのが当たり前なんです。『デザイナーがゴールドマンサックス出身の人とブランドを立ち上げた』みたいなのがザラにある。良い服づくりをしていれば自然と売れる……なんてことはほとんどなくて、やっぱりコネクションや政治力がモノを言う世界でもある」

「そういう意味では、僕らは幸い、なんとか自分たちでシードをつくることはできたけど、これからビジネスを含めてさまざまなプロフェッショナルとともに関わって、成長していくステージにさしかかってきたのかなと考えています」(大丸氏)

2020年はニューヨークをはじめ、東京、パリなど多くのコレクションがデジタル開催へと移行し、アパレル企業はECのさらなる強化を余儀なくされた。商流そのものに変化が訪れるなかで、大丸はこれからのファッションをどう捉えているのだろうか。

「そうは言っても、マス向けのファッションはこれからもあり続けるんだと思います。『マクドナルド』と『京都の料亭』がコンペティターにならないように、僕らは僕らで信じるものづくりをやっていく。ただ、『いいもの』が何なのかはまだ定かではなくて……少なくともそれはネットで評価が高いものじゃなくて、もっと身近なコミュニティの誰かが『これ良かったよ』って言っているものだと思うんです」