スマホ1台でアバター配信可能なバーチャルコミュニティ

同社のプロダクト、REALITYはスマホ1台でアバターを作成し、その姿でライブ配信や他のユーザーとのコミュニケーションが楽しめるコミュニティアプリだ。

REALITYの特徴
 

2017年に事業を構想した時から「アバターを介してコミュニケーションをする、アバター版のFacebookやSNS」を意識していたと荒木氏が話すように、ユーザー同士が“アバターで交流するための場所”に必要な機能を1つ1つ追加してきた。

現在のREALITYには作成した3Dアバターをリアルタイムで動かしながらライブ配信をしたり、他のユーザーの配信を見ながらギフトやコメントを送ったりする機能はもちろん、チャットやオリジナルゲームなどさまざまな要素が詰め込まれているのが特徴だ。

またコミュニケーションを育むイベントなども頻繁に実施。たとえば夏にはREALITY上で「花火大会」を開催している。アバターが浴衣をまとい、他のユーザーと一緒に花火を見て、記念写真を撮る──。そんな現実さながらの体験がバーチャル空間で味わえるわけだ。

これまでにREALITYを介してアバターを用いたコミュニケーションを体験したユーザーは数百万人規模に上る。その対象は日本を超えて63の国と地域に広がっており、国外のユーザーが実に8割以上を占めるという。

REALITYで開催された花火大会の様子
REALITYで開催された花火大会の様子

“人類総アバター化”の時代には、それを前提としたSNSが必要

「シンギュラリティ」と「人類の総アバター化」。REALITYが生まれた背景には荒木氏のそのような考えが大きく影響している。

荒木氏が言うところのシンギュラリティとは、物理的な現実世界とデジタル世界で行われていることが極限まで混ざり合って統合された状態を指す。テクノロジーの進化によりさまざまなハードウェアやソフトウェアを自分の延長線上として扱えるようになり、人間の能力が飛躍的に向上していく。そのような未来に以前から関心を持っていたそうだ。

大きな転換点となったのは、2017年の暮れごろから翌年にかけて日本で「バーチャルYouTuber(VTuber)」のムーブメントが急速に広がったこと。これを見た荒木氏は「単なるYouTube上の面白コンテンツではなく、今後来たる新しいコミュニケーションの姿であり、彼ら彼女らはその先端的な事例にすぎないのではないか」と考えた。

現時点でも多くの人が普段からSNSを当たり前のように使い、チャットツールやオンライン会議サービスなどを駆使しながら仕事をしている。その中で自分のアイデンティティやペルソナが全て同じ人は珍しく、むしろ所属するネットワークやコミュニティに合わせてアイコンやニックネームなどを使い分けている人の方が多い。