コミュニティを作る上では、人がたくさんいないことには始まらない。とにかく多くの人にとって「アクセシブルであること」を追求した結果、スマホ以外のデバイスを一切使わずとも楽しめるサービスであることが重要だと判断した。

一方で、3Dのアバターシステムを作るだけでもそれなりの時間が必要だ。そこにライブ配信やギフトの仕組み、コミュニケーションを育む機能などを搭載するとなれば短期戦とはいかない。

まずはVTuberの配信を楽しむ“視聴”の機能を切り出し、「MVP(顧客にとって価値のある最小限のプロダクトのこと)」のような位置付けで2018年8月よりサービスを始めた。

初年度はスマホ1台で好みのアバターを作り、ライブの配信や視聴ができる環境を整えることに時間を費やした。その土台ができた上で、ゲームやチャットなどコミュニティに必要な要素を次々と実装したのが2年目。直近1年ほどはサービスの改善とともにグローバル対応にも取り組んだ。

アバターを自分自身であると感じてもらうための工夫

REALITYには1つのアプリに多様な要素が詰め込まれている。個別の機能だけを見ると一見近しいものが存在するようにも思えるが、その中にもREALITYなりのこだわりや工夫があるという。

たとえばREALITYのコアとも言える、アバターの場合。最初に悩んだのは「2Dにするか3Dにするか」だった。

コストや立ち上げのスピード感を考えると、2Dの方が圧倒的に安くて早い。ハードウェア性能も3Dほどは求められないので、開発の負担も少なくて済む。またアイテムの制作費においても、3Dは異様にコストがかかる。それでも“あえて”3Dを選んだ。

「3Dで作らないと将来訪れるVR/ARの世界には耐えられないと思ったんです。もしアバターを2Dで作ってしまうと、3D空間の中でペラペラの人を相手にコミュニケーションをすることになり、断絶が起きてしまいます。もともと長期でやることは決めていましたし、3Dのアバターアセットが積み上がっていけば、ゆくゆくは競争力や参入障壁にもなる。お金がかかるな、重たいなと思いつつも3Dでやることを決めました」(荒木氏)

REALITYのコアを担うアバターのカスタム機能
REALITYのコアを担うアバターのカスタム機能

アバターのデザインについても、優秀な3Dアーティストのメンバーを中心にとにかくクオリティにこだわった。

それは荒木氏自身がかつて「GREE アバター」に携わっていた際に「アバターはカッコ良かったり、可愛かったりしなければ意味がない」と肌で感じていたからだ。ユーザーにとってアバターの見た目は重要で、そのためにアイテムなどを購入する人もいる。だからこそ「そもそもベースとなるデザインがショボかったら何をやってもダメ」だという考えがあった。