「健康のために食べる」という現状が、「おいしいから食べる」に変わったら、世界はどう変化していくだろうか。鳥羽氏は遠くを見つめながら、数年後の景色を空想する。
「おいしいものを食べているだけで健康になるなんて、そんな素敵なことはないと思うんです。僕が人生を捧げる“食”を通して、世界中の子どもたちが健やかに暮らせる未来をつくれるのではないか。そう考えるだけで、生きている意味を感じられるんです」(鳥羽氏)
インタビューが始まる直前まで、鳥羽氏は出雲氏に、電車の中で考えてきた新レシピの構想を話していた。「調味料なら麺つゆ、飲み物なら乳酸飲料、お菓子なら餅(きな粉餅)。あと、ふりかけにしたら超おいしいですよ」——その熱狂ぶりからは、プロジェクトを成功に導く執念、そして「人生をかけて挑戦する」という発言の本気度が伺えた。
現在プロジェクトでは、ユーグレナのグリーンパウダーを使ったハンバーグやフレンチトーストなどのレシピも公開している。
プロジェクトでは、チーズケーキやフレンチトーストなど、お弁当以外にもレシピを開発してきた。いわば人間の健康を実現するための挑戦だが、彼らの取り組みはそれに収まらない。
プロジェクトで見据えるのは、地球の健康、つまり食を通じてサステナブルな世界をつくることだ。
「今の子どもたちは学校でSDGsを学んでいます。ファミレスに大豆ミートのハンバーグと牛肉のハンバーグがあったら、地球のことを考えて前者を選ぶべきだと考える子どもが増えていくでしょう。でも、味を我慢させることはしたくありません。鳥羽さんとの取り組みには、そうした壁を突破できる可能性があるんです」(出雲氏)