そして女性自身の知識不足、情報不足により、さまざまな医師に診てもらうなどの余計なステップが発生し、金銭や時間のコストが必要以上にかかっている。上記のFemale Founders Fundの調査では、女性は更年期の診断を受け、治療を受けるために、平均2万ドル(約227万円)も費やしてしまっている。

ここ数年、このギャップに気づいた人たちが、続々とメノテック市場に参入。症状を緩和する製品や、症状を管理するためのプラットフォーム、遠隔医療などのサービスを展開している。ここからは、メノテック領域のスタートアップを数社紹介したい。

更年期世代の女性へのアプローチに特化したD2Cウェルネスブランド「Womaness」

Womanessウェブサイトより
Womanessウェブサイトより

更年期症状を緩和する製品を開発するウェルネスブランドのWomanessは、スキンケア、膣用クリーム、セクシャルウェルネス製品、サプリメントなどを展開している。

デザインのコンセプトは、キャリアの絶頂期にあるセクシーで活気に満ちた女性。米国でディスカウントチェーンを展開するTarget Corporationの元幹部である創業者が、膣の乾燥について悩みを持っていたことが創業の経緯となっている。従来の更年期向け製品はバラエティが少なく、成分もナチュラルではないこと、そしてデザインもカッコいいものがないという気づきを得たことから、更年期症状を緩和する製品が開発された。

量販店で販売されている既存のフェミニンケアブランドの多くが、40代以上の更年期・閉経期の消費者に対応していない。創業者自身、Targetで23年間マーケティングとマーチャンダイジングを担当した経験から、小売店舗で製品を展開することを重視し、2021年3月末からは、Targetでも販売を開始している。

Womaness創業者のSally Mueller(左)、Michelle Jacobs(右) Womanessウェブサイトより
Womaness創業者のSally Mueller(左)、Michelle Jacobs(右) Womanessウェブサイトより

更年期世代の女性たちは、通常のD2Cブランドがターゲットにしているミレニアル世代とは商品展開の方法がまったく異なるという。彼女たちは目が肥えていて、ソーシャルメディアよりも地元の友人グループの影響を受けやすい。

だからこそ、有料メディアとオーガニックメディアの両方を含むソーシャルメディア、イベントを中心とした伝統的なメディアを組み合わせて、アプローチしている。

新しい時代を生きる更年期世代の女性にとって、活発なブランドイメージを持つ同社のコンセプトは受け入れられていくと考える。抜け毛や勃起不全など男性コンプレックスをターゲットにして、男性ウェルネス経済圏を築いたHimsと同様に、更年期女性を囲い込み、さまざまなビジネスが展開できるのではないか、と個人的に期待している。