誰もが信頼を寄せるアルファード“ブランド”
今や日本で最も人気のあるモデルとなったアルファード&ヴェルファイア。レクサス版のLMまで登場し、国内の高級車市場で頂点に君臨しつつある。昔風に言えば今やもう完全に「いつかはアルファード」。憧れの国産車であり、いろんな意味で買っておいて間違いないモデルでもある。好き嫌いは別にして、そして幸運にも買えるのであれば…。
人気のほどは、たとえば街の中古車屋が自分で好んで新車を買って乗っていることからも窺える。人気とはすなわちリセールバリューの高さ。中古車屋はクルマの売買が商売なので、たとえ好きであっても損をしてまで新車を買うことは絶対にない。彼らが好んで買うということは、損どころか得するから。実際、彼らは新車で買って1年以上乗ってまた新車に買い替えている。何km乗っても購入金額と同等かそれ以上で売れることもあるから、永遠に損をしない。人気と供給量が今のまま続く限りだけれど。
フルモデルチェンジして人気はさらに上がった。実際、発表後しばらくして受注停止になり、再開時期はいまだ不明だ。一気に10万台以上のオーダーが入ってしまうと、1年以上先の生産分まで行き先が決まってしまう。つまり欲しいと思っても新車でオーダーはできず、プレミアのついた個体を中古車市場で買うほかない(カーセンサーで探すと1000万円〜だった)。転売ヤーが暗躍し業者オークションで2000万円以上という凄まじい価格がついたこともあって、いよいよメーカーとしても何かしらの対策を取ることが迫られた。別工場での並行生産というニュースが流れると、過熱気味だった転売市場はかなり沈静化したようだ。
とはいえ注文できないという事態は変わらず異常である。それもこれもやはりアルファードというクルマのキャラクター、厳つい箱型スタイルや程よく広いリビングのようなインテリアなど、が日本人の好みに合っているからだろう。実際、世界を見渡してみても、この手のカテゴリー(ミッドサイズのMPV)が国内人気ナンバー1モデルという国は他にない。
新型アルファードの魅力はいったい何なのか。人気の理由は“人気モノの新型だから”に尽きる。内外装のデザイン的な変化と各種機能装備の充実だけがこれほどの大量受注を招いた。誰もがアルファードというモデルに信頼を寄せている証拠であり、これこそがブランドビジネスの神髄だ。
極論すれば、ダイナミック性能など変わらなくても初期受注はほとんど変わらなかったに違いない。なにせ旧型もモデル末期まで人気を保っていたのだ(そりゃそうだ、1年で乗り換えて得するクルマなのだから、モデル末期で不人気という常識は当てはまらない)。
とはいえ中身がそのまんまというんじゃ、世界一の自動車メーカーの沽券に関わる。買ってからのユーザー満足度も高めるべく、モデルとしてはキープコンセプトながらその性能を進化させてきた。