景気減速が現実味を帯び始めた米国
11月半ば頃から、外国為替相場でドル売りが増え始めた。11月下旬、円やユーロに対するドル売り圧力は高まった。その一因は米国経済の減速だ。10月の米雇用統計に、その兆候が表れている。非農業部門の雇用者数の伸びは市場予想を下回った。賃金上昇率は前年同月比で4%を上回ったが、上昇ペースは弱まった。これまで米国経済を支えた労働市場のタイトさが薄れ、個人消費をはじめとする景気の減速が懸念されている。
その後の主要経済指標も、緩やかな景気の減速を示唆した。過剰貯蓄減少、学生ローン返済の再開、金利上昇によるクレジットカードや自動車ローンなどの返済負担上昇などを背景に消費者心理は悪化した。インフレも鈍化した。
そうした状況下、10月の小売売上高が、前月から減少したことは大きな注目を浴びた。いよいよ個人消費のペースが鈍化し、米国経済は減速し始めたと認識する主要投資家が増えている。こうしてドル・インデックスは頭打ちになった。
賃金の上昇ペースがまだ高いため、短期のうちに個人消費が腰折れ状態に陥ることは考えにくい。が、利上げが、米国の旺盛な需要を抑え始めたといえる。その後、新築・中古の住宅販売、設備投資の先行指標であるコア資本材受注も減少した。
11月下旬、これまで利上げ重視派だったFRB関係者も、金融引き締めのペースを緩めても良いかもしれない、との見解を示した。失業保険の継続受給者数は2年ぶりの水準に上昇し、労働市場の需給が緩んでいることも確認された。短期から超長期まで米金利は低下し、ドルは売られた。