金融 人事コンフィデンシャル#2Photo by Yasuo Katatae

三井住友フィナンシャルグループでは、前社長の太田純氏急死からわずか6日後、副社長だった中島達氏が大方の予想通り社長に就任。緊急事態対応のお手本のようなスムーズな新体制移行を済ませた。そこで、特集『金融 人事コンフィデンシャル』#2では、順当な人事が行われた背景と、次世代の幹部人事を考える上で浮上している“新登竜門”について解説する。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)

中島新体制に誰もが納得
次世代の新登竜門とは?

「社員の皆さんには、しっかり顔を上げて、前を向いて進もうと伝えたい。太田さんがそれを望んでいる」

 2023年11月25日に急死した三井住友フィナンシャルグループ(FG)の太田純前社長の後を継いで、23年12月1日付で三井住友FG社長に就任した中島達氏は記者会見の席上、社員に伝えたいこととしてそう答えた。そして、それを壇上の左隣で聞いていた國部毅三井住友FG会長は、自らに言い聞かせるように、何度も小さく頷いた。

 振り返れば、三井住友FGはこの2年の間、社員の精神的支柱ともいうべき役員を相次いで失う悲劇に見舞われた。21年10月に、三井住友銀行会長だった宮田孝一氏が、太田前社長と同じく膵臓がんで死去している。

 旧三井銀行出身の宮田氏は、三井住友FG発足時から続く旧三井の系譜を、岡田明重三井住友FG会長、北山禎介三井住友FG社長・三井住友銀行会長から引き継ぐ存在だった。領袖を失った旧三井出身の行員にとって、ショックはとりわけ大きかった。

 そして、今回の太田氏である。面倒見が良く豪放磊落な太田氏は、旧行どころかライバルである他メガバンクの行員からも慕われる、三井住友FGが誇るリーダーだった。

 新社長の中島氏は、悲しみに暮れるそんな三井住友FGのかじ取りを、急きょ担うことになった。ただし、多くの関係者は、中島氏は「なるべくしてなった」と冷静に受け止めている。17年の高島誠氏(現三井住友銀行会長)、23年の福留朗裕氏の三井住友銀行頭取人事のように、誰も予想できないサプライズ人事とはならなかった。

 中島氏の新社長就任は誰もが予想し、納得するものだったわけだ。そこで新体制発足の背景と、定石通りなら6年後の誕生となる次世代トップの“新登竜門”について解説していく。