米オープンAIの「ChatGPT」の登場で大ブームとなった生成AI。2024年はどんな新展開を見せるのか。特集『総予測2024』の本稿では、日本を代表するAIベンチャー、プリファード・ネットワークスの岡野原大輔氏に、生成AIの未来や動向を注目している企業について聞いた。(聞き手・ダイヤモンド編集部副編集長・大矢博之)
ChatGPTは想定外の広がりだった
誰でもAIを簡単に試せる状況に
――2023年は生成AIが大ブームになりました。
「ChatGPT」の存在が大きいですよね。22年11月の発表以降、技術者だけでなく普通の人も一斉に使い始めました。利用者数は今や2億人ともいわれています。想定外の広がりでした。
それ以前もAIは利用されていましたが、専門家が使うもので、大半の人は直接触れる機会がなかった。これが、誰でも簡単にAIを試せる状況へと突然変わり、さらに、「AIは使えそうだ」という可能性をも感じさせた。このインパクトは本当に大きいです。
――ChatGPTはどこが革新的だったのでしょうか。
技術的には20年に「GPT-3」が登場したときから、研究者の間で評判でした。ChatGPTの強みは「対話」という、他人にテキストで指示するのと同じような感覚で一般の人にも使えるようにし、ハードルを下げた点でしょう。
またAI研究者の視点では、AIに新たな仕事をさせたい場合、専用の学習データを作り学習させてから利用することが一般的でした。しかしChatGPTは新たな仕事をすぐに実行したり、少ない事例だけで適用できたりします。「フューショットラーニング」と呼ばれる能力ですが、誰でもさまざまな用途でいきなり試すことができるようになった。これは今までになかった強みですね。
――24年にAIはどう進化していくのでしょうか。
テキストだけでなく、画像や音声などさまざまなデータをまとめて扱える「マルチモーダル」なAIが、従来はできなかったことを実現していくとみています。
2024年の注目トレンドとして「マルチモーダルAI」を挙げた岡野原氏。マルチモーダルAIはどんなことが実現できるのか。次ページでは、岡野原氏にAIの今後を展望してもらうとともに、「ポストChatGPT」として動向を注目している企業についても明かしてもらった。