徳力 すごい話ですね。もうその逸話だけで十分記事になりそうです。
数値に囚われない感覚を大事に
徳力 村岡さんは、マーケティング担当になられて以降、いろんなカンファレンスに登壇されていますよね。登壇し始めたのは、いつ頃ですか。
村岡 2015年頃からです。配属されて半年ほどで、大きなマーケティングカンファレンスに呼ばれたんですよ。
徳力 それは早いですね。外に出て話すことに抵抗感はなかったでしょうか。それに、日本では、会社として若いメンバーを登壇させることに抵抗感がありそうです。
村岡 どちらも、ありませんでしたね。ネスレは外資系で組織がフラットなこともありますし、私自身も大学のときに、英語サークルでスピーチをしていた経験があったので、話すことに抵抗感はなかったんです。
徳力 私はデジタルマーケティングにおいては、エクセル上の数値に囚われがちな人と、その先にいる人間までイメージできている人に、はっきり分かれるなと感じています。カンファレンスでの村岡さんの発言を聞いていると、データ分析をして成果にコミットしながら、人間もしっかり見ている印象です。なぜ、それができているのでしょうか。
村岡 具体的な誰かをイメージしているんですよ。この商品であれば、実際に誰が受け取ってくれるのかをすごく考えて、エクセル上の数値と私の感覚にギャップがあれば、施策を変えたりもします。
徳力 例えば、どういうことですか。
村岡 少し前に、YouTubeの6秒動画でABCDの4パターンを制作してクリエイティブテストをしたのですが、AパターンのCPM(Cost Per Mille)が最も良かったんですよね。
徳力 一般的にはCPMが良いというのは、しっかりユーザーが見てくれているということですよね?
村岡 はい。でも、何か違和感があったんです。Bパターンの方が少しやかましい表現だけれども、私の印象にはすごく残っていて。それでYouTubeのブランドリフトサーベイにかけたら、やっぱりBパターンの方の結果が良かったんです。CPMの良さが必ずしもブランドリフトにつながっていないことを確認できました。
徳力 Bパターンは冒頭で飛ばされることも多いけれど、最後まで見た人の気持ちが動いていたということなんですね。数字としての「結果」だけを見ていると、その違和感に気づけず、そのまま進んでしまうリスクがあった。村岡さんがその目線を持てたのは、先ほどのアンケートの経験があったからですか。