海外で販売するなら、牛丼は「1杯1500円」にしてもいい

 例えば海外の企業は、日本企業に多く見られる「価格の低さ」を押し出すケースはかなり少数です。

 牛丼なんて海外で販売するなら1杯1500円に設定してもいいくらいです。本来、その価格でも買ってもらえる方向性の努力をしたいわけです。でも実際は、競合から安くて良いものが提供されて、価格競争をすることになってしまっています。結果的に商品の価値は下げられてしまうわけです。

 そうなると最終的に売り上げは小さくなりますから、優秀な人材が(価格の低さで勝負をしたがらない)海外や外資に行くのは当たり前のことです。品質と低価格を追うのではなく、どこかで腹をくくって1500円で売れるストーリーを作らなきゃいけない。その時代に差し掛かってきていることを、認識しなければいけないでしょう。

「ど田舎」は「秘境」、何ごとにも必ず魅力はある

 ブランディングに悩む企業の多くは、自社の魅力が見つけられない悩みを持っています。しかし、何ごとにも必ず魅力があると考えるべきなんです。

 うまくブランディングをすれば、「ど田舎」を「秘境」に変え、「アクセスが悪い」というウィークポイントすら魅力に変えることができます。「環境が悪いから値段を下げなければいけない。一般的に魅力と思われる部分を磨かなければいけない」という思想を捨てて考えることが、企業にとって最初の一歩になるのかもしれません。

 もう1つ重要になるのが、企業の魅力やストーリーに対して、社長自身がしっくりくる必要は必ずしもないということです。なぜなら、ブランディングは、ファンを作るために存在するからです。

 そもそも経営者の思考というのはかなり特殊で、世間一般の意見と食い違っていることだってあります。ですから、自身が納得のいくストーリーを優先し、機能しないブランディングを推し進めないように注意しなければなりません。

企業のブランディングを担うのは「人事部」

 ブランディングの相談を受ける中で、重要なポジションは人事部だと思っています。

 人事部は、「人材を採用する」という役割に焦点が当たりがちです。ですが本来、採用と社内へのブランディングの浸透の役割を担うポジションなんです。

 ただ、そんな役割が機能している企業は、日本にはごくわずかと感じています。ブランディングというのは、社内の人材にストーリーを浸透させるインナーブランディングが機能して、初めて社外に伝播していきます。インナーブランディングとアウターブランディングの順番が逆になっている企業が多いように感じています。