2つの注力領域は物流とフィンテック

 KURONEKO Innovation Fundの出資総額は50億円で運用期間は10年。出資金額は5000万円から数億円程度だ。対象ステージはシード、アーリー、ミドルを基本とする。

 同ファンドでは物流・サプライチェーンに変革を起こしうる国内外のスタートアップ企業への投資を行うほか、協業も視野にある。財務的なリターンの獲得だけに期待するのではなく、既存事業の一段の強化、そして新規事業の創出にも取り組んでいく予定だ。

 ヤマトの事業には「非常に裾野が広い分野が関係してくる」(牧浦氏)。牧浦氏は、AIやロボティクス、フィンテック、ブロックチェーンなど幅広い分野を挙げ、2つの例を用いて投資領域を説明する。

「1つはロジに直接関係のある部分。デリバリー、倉庫の中、そしてサプライチェーン。これから物流企業は製造業企業など、サプライチェーンの反対側にいる企業と繋がっていくと思っている。そのような部分のプラットフォームを作ろうとしているスタートアップには非常に注目している。そしてもう1つ重要なのはフィンテック。中でも企業間のフィンテック・ソリューションを開発するスタートアップへの関心は高い」(牧浦氏)

 だが、例えシナジーが期待できたとしても、ヤマトの「目利きが弱い領域」もある。そこで生かされるのがグローバル・ブレインの知見だと牧浦氏は語る。グローバル・ブレインは無限責任組合員としてファンドを共同運営する。

 グローバル・ブレイン代表取締役社長の百合本安彦氏は「日本ではなくグローバルで、スタートアップを徹底的に洗い出し、(ヤマトとの)協業につなげていきたい」と意気込む。

「私たちは30名を超えるキャピタリストを抱えており、その中にはディープテックを専門とするキャピタリストが10名以上いる。AI、サイバーセキュリティー、ロボティクスをはじめとした、ディープテック領域のカバリングはほぼ終わっている。そういったところが非常に生きるのではないかと思っている」(百合本氏)

 ヤマトでは今後も本体からの直接投資も併せて行なう予定だ。ファンドで投資ができないもの、ファンド規模ではカバーしきれない大型投資は直接投資を検討する。ファンドで投資をして関係を作る中で、「取り込みたい」となれば直接投資、またはM&Aを実施する考えだという。

 ヤマトは2017年7月、荷主企業と運送企業をマッチングする「ハコベル」運営のラクスルとの資本提携を発表している。これが同社にとって初のスタートアップ投資となった。牧浦氏は「ラクスルへの投資は得られるものが非常に大きかった。学びも大きかった」と振り返る。