プロジェクト誕生のきっかけになったのが、池田泉州銀行とマクアケの連携だ。大阪城と大関、それぞれの事業支援を担当していた池田泉州銀行が、マクアケを紹介した。

 新しいお土産を開発したい大阪城天守閣と、販路開拓の仕掛けを作りたい大関。まったく別の課題をもつ両者をコラボレーションさせようと考えた。

「構想1年の大型プロジェクトでした。『大阪城天守閣のもつ歴史的知見と、大関のもつ商品開発のノウハウをかけ合わせたら、まったく新しい製品が生まれるのではないか』という発想が始まりでした。それから4社が頻繁に集まり、それぞれの知見を出し合って実現した、“知恵の結晶”がこの企画です」(池田泉州銀行の吉田敏リレーション推進部長)

地方の金融機関が「競合」のクラウドファンディングと組む意外な理由マクアケで限定販売された「語らいの酒 夢人(ゆめびと)」

 内容は、「同じ時代を生き、共に語り合った二つの個性」をコンセプトに、大阪城天守閣所蔵の大久保利通自筆の漢詩から「夢」の字を、西郷隆盛自筆の漢詩から「人」の字を選び、「夢人」という2本セットの日本酒を、マクアケで限定販売するというものだった。

 結果、286名の支援者が集まり、目標を上回る350万円の資金調達を達成。地域と密接にかかわる金融機関と、優れたPRのノウハウをもつクラウドファンディング会社が手を組んだからこそ実現した企画だった。

事業性を“お試し”できるマーケティングが魅力

 池田泉州銀行は、3年前にマクアケとの連携を開始し、数々のプロジェクトに取り組んできた。

「(池田泉州銀行では)20年以上前から、産学連携でのベンチャー支援を含めた様々な企業の支援を行ってきました。しかし、企業がせっかく新製品を作っても、プロモーションの方法がクローズドな展示会などに限られており、思うように広がりませんでした」(吉田部長)

 資金面の支援だけでは顧客企業が抱えるニーズに応えられないことを痛感した池田泉州銀行は、クラウドファンディング会社のノウハウに着目した。中でも、マクアケが持つデジタル領域に特化したPRの知見と、キュレーターと呼ばれる担当者の行動力と企画力に魅力を感じ、連携を開始した。すると、すぐに企業から反応があった。

「『新製品をテストマーケティングしてみたい』という需要が、想像以上に高かったんです」(吉田部長)

「この新製品は量産すべきなのか」「アイデアの方向性は合っているのか」「どんな人に買ってもらえるのか」。消費者の行動は、実際に市場で試してみないとわからない。クラウドファンディングは、新製品の“お試しの場”に最適だったのだ。最近では、この“お試し”にハマって、新製品が出るたびにクラウドファンディングで試すリピーター企業も多い。