金融機関とクラウドファンディング会社は、資金調達という業務では競合する側面はあるが、「それ以上に彼らのもつPRのノウハウを地方企業に還元してもらえることが、今回の取り組みで得られた大きなメリットです。大阪はものづくり企業が多いのですが、ものづくりの技術力はあっても、消費者向けのPRに不慣れなので」と吉田部長は話す。
地方自治体や新聞を巻き込み“共感”を生む密着プロジェクトも
一方、社会貢献や地方支援系の案件を得意とするレディーフォーも、連携企業数71社、案件数100件以上と、実績を伸ばしている。金融機関だけでなく、地方自治体や地元新聞社も巻き込み、より地域に密着したプロジェクトを行っているのが特徴だ。
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そのひとつが2016年12月にスタートした「山形サポート」。山形新聞社と地方銀行の荘内銀行が中心となり、県などの協力も得て進めている、地域に根差した山形県専用のクラウドファンディングサイトだ。県内でプロジェクト実行者を募り、山形サポートとレディーフォー双方のサイトで全国から広く支援を集める仕組みだ。目標額に達成したら、実行者から資金提供者へ返礼品を送り、感謝の気持ちを伝える。ネットを通じた気持ちのやり取りが反響を呼び、このサイト内だけで55件のプロジェクトが成立している。
「山形サポートのような地域密着型のプロジェクトは平均の目標額達成率が75%と、かなり高いのが特徴です。内容が、“山形名物の「芋煮会」をやるための大きな鍋を作る”など、地域や人に密着して“共感”を集めたからこその達成率だと思います」(レディーフォー)
背景にある金融機関の「強い危機意識」
金融機関がクラウドファンディング起業との連携を促進させる背景について、マクアケの坊垣佳奈取締役は「地方金融機関の強い危機意識がある」という。安倍内閣の「地方創生」政策の一環で、地方金融機関には地域に密接した金融サービスが求められているが、必要なノウハウが揃っているわけではない。
「私の元に大手地銀の役員の方から、直接相談がくることもあるくらいです。中には、融資判断のための『事業の将来性がわかる客観的材料が欲しい』という需要も多いです」(坊垣取締役)
クラウドファンディングは、金融機関からの融資に比べると審査基準は厳しくなく、資金需要側にすると利用のハードルは低い。返済の必要がないケースもあり、新規で事業をおこす際のリスクも軽減される。一方、金融機関にとっては、取引先の事業の将来性について、まずクラウドファンディングの動きをみて判断することができる。