またゼンリングループと連携して都心20万件のオフィス入居テナント情報を収集。不透明だった賃料については、パイプラインから収集したデータを提供するほか、過去データしかない物件に関しては独自アルゴリズムで“推定賃料”を割り出している。
estie proを使うことで仲介会社の担当者は空室情報や貸主情報、入居テナントの情報を調べるための工数が圧倒的に減り、顧客への提案やコミュニケーションにより多くの時間を使えるようになる。不動産デベロッパーのセールス担当者は競合企業が展開するオフィスビルの情報を素早くリサーチすることで、自社ビルに合いそうな見込み客を見つけたり、募集条件を改善したりもできるだろう。
同サービスには業務を効率化する仕組みとして、複数の物件をグルーピングして社内で共有する機能や、抽出した物件リストに自社のロゴと連絡先を入れてPDF出力できる機能なども搭載。これらを月額制の基本料金とアカウント数ベースの従量課金モデルを組み合わせる形で提供している。
平井氏の話では大手不動産デベロッパー数社のほか、不動産ファンドや仲介会社などに導入が進んでいるとのこと。コロナの影響でオフラインでの情報交換が難しくなりデジタル化が加速したこともあって、7月のサブスクリプション収益は3月と比べて約9倍に増加したという。
三菱地所出身の創業者、目指すのは「不動産会社の業務効率化を支えるインフラ」
estie創業者の平井氏は東京大学から大手デベロッパーの三菱地所に入社したのちに起業をした。デジタル化が進んでおらず課題も多いオフィス賃貸市場の現状を変えることを目指し、大学時代の友人と立ち上げたのがこの会社だ。
同社には平井氏をはじめ不動産業界で働いた経験のあるメンバーだけでなく、NTTドコモ出身の機械学習エンジニア・宮野恵太氏(取締役CTO)などテクノロジーに精通したメンバーも複数人在籍。業界の知見とテクノロジーのバックグラウンドを掛け合わせ、事業を作ってきた。東京大学協創プラットフォームが運営する起業支援プログラムを経て、2019年3月には東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)から1.5億円の資金を調達している。
「これまでは基盤となるデータを集めるフェーズでしたが、ようやくほぼ全てのデータを取得できる体制が整いました。今後はそれを駆使してどうやって不動産会社における業務のDXをサポートしていけるかを追求していきます」(平井氏)
今回新たに調達した資金はそのための軍資金だ。7月中にはestie pro内で物件ごとの詳細レポートを閲覧できるアナリティクス機能を追加する計画。過去の成約水準や将来予測、オフィスビルの将来供給データなど新たな情報も提供していく予定だ。