仲介会社にしてみれば、中小規模の企業にまで担当者が付きっきりでサポートするというのはコスト的にも難しい。ネット上でオフィスを探すという動きが少しずつ普及する中で、顧客接点を効果的に広げるツールとしてestieの利用が加速しているそうだ。
導入企業の増加や機能拡張もあって、estieへの流入数も昨年9月のサービスローンチから20年6月までの期間では平均すると月次で40%の成長を継続中。新型コロナウイルスの影響から一時的にユーザーの伸びが止まったタイミングはあったが、5月以降は縮小移転の問い合わせが増加したこともあり、estieだけでなくマーケット全体としても再び需要が増え始めている状況だという。
テクノロジーで“推定賃料”など「ウェブ上にない情報」を可視化
もう1つのプロダクトであるestie proは仲介会社とオーナーの業務効率化を支援するデータベースだ。
最大の特徴はオフィス賃貸に必要となる様々なデータがまとまっていること。具体的には全国約7万棟・40万フロアの物件情報、日次で更新される約500万坪の募集情報、約24万件分の賃料情報、都心20万件の入居事業者などを掲載。導入企業は条件に該当する企業を抽出して一覧で確認できるほか、マップ上に表示することもできる。
estie proのポイントは「公知ではあるものの自分で網羅的に調べるのは膨大なリソースが必要な情報」に加えて「ウェブ上には一切出ていない情報」をカバーしている点だ。
たとえば不動産の所有者情報などは登記を見ればわかるが、手作業で逐一調べていくには時間がかかる。また「現在どのオフィスビルの、どの床が、いくらで募集に出されているか」といった生の情報は、検索エンジンで調べても分からないことが多い。
「仲介会社やデベロッパーの担当者は、従来このような情報を自身のネットワークを頼りにオフラインのコミュニケーションを通じて収集していました。定例会や食事の席を通じて『隣のビルに空室があるのか』『いくらで募集しているのか』といったことを地道にヒアリングしているんです。このやり方では時間と手間がかかるだけでなく、個人の関係性に依存するので、経験の浅い若手の営業マンなどはどんなに頑張っても集められない情報がありました」(平井氏)
こうした業界の構造を変えるためにestieがとったアプローチは、テクノロジーの活用と業界関係者とのパイプライン作りだ。同社では不動産デベロッパー、管理会社、仲介会社を始め50以上のパイプラインを構築し、データ連携などによって独自情報を集約。情報の提供元を伏せた状態でestie proの導入企業がそれらの情報にアクセスできるようにした。